■ 輸出古紙市況:米国古紙一時停止古紙価格高騰
2018年5月29日
5月15日に12回目のライセンス更新発表があった。引き続き大企業優遇のライセンス更新は続く。
今月初旬に発表された米古紙の輸入禁止措置はかつてないほどの中国国内古紙の高騰を招き、滞留した米古紙が東南アジアに安く出回ったために東南アジアの価格は反落した。中国国内の原紙値上げから東南アジアの製紙メーカーへ原紙発注が殺到し原料調達の為ヨーロッパへ古紙購買の打診をしているが、中国向け価格が上昇している為ヨーロッパの古紙サプライヤーは供給を絞っている模様。
22日、米国品のCCIC検査がカナダによる代理検査が認められ規制が緩和された形となった。米国古紙の輸入停止はトランプ政権への報復措置の一環としての意味合いが強かったのか、21日の米中通商協議の共同声明が発表された直後の緩和発表となった。文書のニュアンスは禁止発表後も特定の税関で米国品の通関が続けられていたことを臭わせる書き方だが、中国政府は当初から米トランプ政権との和解を考えていたのだろうか。中国政府は米国からの大豆や石油製品の輸入を拡大することを発表し実質上米中の貿易摩擦問題は緩和、収束を迎えた。両国の緊張が緩和され為替も円安ドル高へと移行している。
米古紙禁輸措置の影響は緩和措置より収束し今後徐々に落ち着くと思われるが、米古紙は全量100%の検査実施、禁輸措置直後中国向け契約のキャンセルを打診したサプライヤーもいるとのこと。急高騰した中国国内の再生廃棄物原料価格は徐々に下落していくとみられるが、引き続き中国の廃棄物に対する規制、検査の強化は継続される上ライセンスの発給は限定的なものとなる為輸入増は望めないだろう。
中国の古紙輸入価格は東南アジアの購買価格と大きな差が出ている。高止まりする中国古紙とその一方で台湾向けAOCCオファーは上記禁輸措置の発表数日後にはCIF TAIWANA $130-135という価格もあり最安で$120、高くとも$150付近まで下落している。中国からの日本品への引き合いは強含みだが、大手中心の限定的な数量と品質によるシップバックリスク、輸出ドレーの確保問題も重なり積極的な輸出がしづらい環境に変わりはない。
数年前は東南アジアと中国の古紙購入価格差はフレートを差し引いても数十銭、商社口銭を削れば対応が可能だった。また品質面も一番緩かったのは中国で古紙の輸出増加をけん引し低品質のものでも購入した。しかし三年前からはじまった「独身の日」バブルによる中国の一人高市況は東南アジア製紙メーカーの価格追随を許さず価格差を広げていった。一定価格(CIF$230-240前後)を超えると東南アジアメーカーは購入を止めてしまう。今年はさらに中国の規制により世界中の古紙が余り集中したことによりさらに価格差は大きく開き二極化し、品質のいいものは中国向け、リスクのあるものは安く東南アジア向けで販売する等、品質と仕入先によって取捨選択しなければ供給ができない状況だ。
そんな中各国のサプライヤーは中国向け古紙の「選別仕訳」を試行錯誤しているが、その反動として中国以外のアジア諸国向けの古紙品質が低下しているとの声も多く聞かれる。韓国でも米古紙の品質低下から日本品への比率を高める動きもみられ、極端に品質の悪いものがアジア諸国に出荷される様では環境規制や買い手側の受け入れ拒否がアジア諸国でも実施されかねず本末転倒なのではないだろうか。