技術革新が進む世界の紙パルプ設備(AI・Iot化)

  ■ 技術革新が進む世界の紙パルプ設備(AI・Iot化)

2020年5月25日

紙パルプ製紙マシンのAI・Iot化が急速に進んでいる。

ドイツのPro Group社は、世界初の人工知能(AI)ベースのバルメットIQウェブ検査システム(WIS)を導入する事を決定した。 同システムを導入する予定のPM2は昨年の改造により、坪量80gの中芯で世界最速の1751m/分を記録しており、抄紙幅10.85m、製造効率化は94.%を達成している。

中核となるバルメット産業用インターネット(VII)システムは、工場内のプラットフォームから送信されるデータを組み合わせ、オンライン上で検査分析を行う。 VIIは生産効率を最大限に引き上げるためワインダーのコントロールシステムを搭載し、ValmetIQ Webモニタリングシステム(WMS)は、AIへ支援情報を提供する上でWeb検査欠陥を減少させる為8Kカメラを利用している。53台のカメラを備えた大規模なWMSにより、故障やトラブルの根本原因分析を迅速かつ簡単に行うという。

(VII)アプリケーションと組み合わせや、オートメーションシステムとの統合により、集積されたデータを最大限に活用する。また品質管理やトラブルの発見・解決、機械の操作を自動化する事によって製品品質の安定と製造の最適化を行う設計となっている。

さらにValmet社はチリのパルプメーカーであるArauco社とも最新のパルプ製造マシンPM3の導入契約を結んだ事を発表した。同マシンはインターネットを通じモニタリング結果を常時Valmet本社に送信。遠隔地にいる専門の技術者がマシンのパフォーマンスや状況をリアルタイムで把握できる。 

マシン自身にも最適化及び高度な予測・監視機能を有し、世界でも最も自立した制御システムを搭載したパルプ設備となるという。同計画は2011年に開始されたプロジェクトで、旧式1号機の廃機の他2号機の近代化改修を含むMAPA(Modernization and Extension of Arauco Mill project)の一貫で総投資額23.5億㌦規模となる。3号機の生産量は年産156万㌧で、工場全体の生産量は210万㌧となる見込みだ。 

導入される第四世代Valmet Kappa Analyzersは生産工程の最適化、各製造工程の生産計画と品質計画を自動生成することで、製造工程レベルの決定を自動化し、生産能力の向上とコストを実現する。

各製造プロセスでは、原料工程のリグニンとヘキセヌロン酸(HexA)保有量の測定結果と、品質管理工程の高精度カメラと自動サンプリング試験機によって得たリグニンの保有率や白色度、繊維強度の測定結果をモニタリング、工程内に設置された各センサーによって薬品を自動制御。回収ボイラーでは黒液のアルカリ成分をモニタリング、回収ボイラーの薬品コスト最適化を実現する。またモニタリング結果はドライパートや電力も制御し総合的なコストの最適化を行う。

インダストリー4.0技術を導入した製造業の最適化、効率化は加速している。最新の技術を導入した製造設備は老朽化した旧式マシンのアップグレードしただけでは、競争力の差を埋められないレベルに技術革新が進んでいる。

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