■ 米中貿易戦争と今後の世界経済
2018年8月27日
個人的見解ではあるが中国の対米古紙報復関税を受けて、今後短期的には(年末に向けて)日本の古紙価格は堅調に推移すると思われる。 しかし今回の関東組合の「価格の行き過ぎ」は古紙のタイト感だけでは説明が難しい。 また秋需が終わった年明け2019年の輸入ライセンスの発行は本年度よりさらに絞られると予測され、かつ例年通りの旧正月の休転期間、不需要期に突入する。その翌年の2020年には古紙の輸入は全面的に禁止するとの計画もあり年末以降も古紙価格が維持されるとは考えにくい。今回の米国と中国の報復関税合戦が紙・パルプ、古紙市況与える影響も大きく、懸念材料ではあるがそれ以前に世界の景気が大きく減退してしまうことの方が遥に怖い。もし景気が減退し原紙市況が悪くなれば古紙価格の暴落もありうる。 事実当社の中国向け原紙の販売は関税決定後キャンセルが発生し受注に陰りが見え始めている。
知的財産権の侵害と貿易赤字に対す報復を名目に科せられた報復関税はいわば自国の産業を守るためというお題目はあるものの、11月に控える中間選挙を視野に入れた政治的威信を高めるための動きでしかない。 いたずらに世界各国を刺激し、また今や世界2位の経済大国となった中国と1位の米国との貿易戦争は誰の徳を生むものではない。ましてや中国は世界2位のGDP国であるだけではなく、一番の米国債保有国【1兆1,787憶米ドル(約130兆円)】でもある。中国が米国の国債を売却すれば米国債価格は暴落し米国は大損害を被ることになる。
過去の歴史が物語っている様に米国の追加関税措置は世界的な不景気、貿易の縮小を招く恐れが非常に高い為米中応酬共にメンツを捨て冷静な対応をしてもらいたい。具体的に過去の歴史を振り返ってみると1929年10月に米国ウォール街発端の株価暴落「ブラックフライデー」をきっかけに不況に突入した際、米国が国内産業を守るために「スムート・ホーリー法」2万品以上の輸入品に40-50%の関税を掛ける措置を取ったことがまさに今の米国の政策と似た状況といえる。これに対しヨーロッパ諸国が米国に報復関税を課し1929年1月に30憶ドルあった世界の貿易額は1933年には9憶ドル台へと3年間で1/3にまで落ち込むという勢いで縮小した。米国の貿易額も75%の減少となり世界的大恐慌を招き、結果的には第二次世界大戦の要因の一つとなってしまう。
11月の中間選挙の後トランプ政権が姿勢を軟化させればあるいは、とは思うが強硬手段を継続すれば世界の景気は急速に冷え込んでしまうのではないだろうか。特に中国は過剰に反応する為その影響が懸念される。米国を守るという名目のトランプ政策も、周囲への影響を顧みないこのような強硬手段では自国さえ破滅に導く可能性があることを考えて欲しいとつくづく思う。