■ 世界の段ボール増産と市況
2020年12月11日
ドイツの段ボール協会によるとドイツの段ボールケース販売は新型肺炎拡大当初都市封鎖により低迷したものの、経済再開に伴い需要が拡大、20年1-10月の販売数は67億㎡となり前年同期比4,000万㎡の増加となった。21年の予測は第一四半期と第二四半期に於いて0.5%と1.9%の成長を見込んでいる。価格も10月から2か月連続の値上げとなった。12月も再値上げを打ち出しており、ユーザーは段ボールケースを在庫する方向で発注を増やしており、箱不足に拍車をかけている。
今年8月に稼働を開始したProgroups社のPM3は日産2,000tを超える生産を記録しており、来年の1月にはフル稼働となる見通しだ。同マシンがフル稼働となれば年産75万tの生産となる。
イタリアでは古紙価格が11月以降上昇に転じた。都市封鎖が再開され、今後古紙の発生に影響がでるものと思われる。同国においても輸出コンテナ不足が発生しているが、東南アジアからの引き合いは堅調、古紙不足が発生する事への懸念から価格が上昇している。 フランスの段ボール原紙価格も10月に入り上昇した。新型肺炎の影響で製紙各社が休転した事、年末に近づき中国からの需要が強まったことが価格を押し上げ、11月も二度目の値上げを実施した。
イギリスの製紙製函一貫メーカーであるDS Smith社はイタリア(カステルフランコ・エミーリア)とポーランド(ベウハトゥフ)に1憶ポンド(135億円)を投じ段ボール工場(製函)を建設することを発表した。新型肺炎の流行により欧州では消費者向けe-コマースの売上が急上昇しており、脱プラ需要が重なった事により段ボールの需要が拡大している。両工場は2020年第1四半期の稼働を予定している。
トルコの板紙メーカーであるKipas Kagit社は今年初旬に稼働予定だったPM2の稼働を再度遅らせる事を発表した。同社ではPM1年産40万㌧、70-200g/㎡のマシンが稼働中であるがPM2、70万㌧マシンは新型肺炎の流行を原因に稼働が遅れている。PM2はマシン幅8.9m、90-400g/㎡、1200m/分のマシンで中芯・ライナーの併抄マシンだが、稼働後50万㌧のPM3導入も計画している。
*2021年7月9日PM2稼働開始
トルコでは年間400万㌧の古紙内需があるが古紙の回収率は50%以下と低く古紙の輸入国だ。トルコ政府は相次ぐ段原紙増産発表に19年10月、トン当たり50ユーロの輸入関税を発表した。しかし製紙業界からの猛反発にあい法案は撤回、代わりに輸入古紙の使用率を50%以下にするようにする法律が施行された。
中国では貴州鵬昇紙業が段ボール原紙事業に新規参入し、自身の安龍工場にて生産を開始した。5.6m幅、抄紙速850m/分の国産マシンでローカル古紙100%を使用し90-140gの強化芯を製造する。年産は25万tとなる見込みだ。今年年末には年産35万tの2号機を稼働、テストライナーを製造する予定だ。
サンペーパーラオス工場にて稼働開始したライナーマシンの詳細が公表された。 1号機 140-250g/㎡、抄紙幅6600mm 抄速1200m/分 年産52万t で古紙ベースのテストライナーを抄造する。2号機 100-160g/㎡ 抄紙幅6600mm 抄速1200m/分 年産48万tで21年1月初旬稼働予定となっており、全量中国市場への輸出を計画している。
ラオス・中国間の関税は12月から97%以上の製品に於いて無税となっており、中芯とテストライナーも関税撤廃の対象となっている。 また同工場では19年より再生パルプマシン(40万t)が稼働しており、AOCC $200-250㌦、DSOCC $230-235の高値を付け米国古紙の買い付けを強化している。DLKには250㌦付近をつけ、コンテナと古紙不足が価格の高騰を後押しした。 2号機が稼働を始めれば同社ラオス工場のみで120万㌧以上の段古紙を消費する事となり、AOCC輸出量の10%に相当する量となる。