■ 段原紙の輸出増加は古紙不足を招く? 台湾の古紙輸入量が二倍になったワケ
2022年1月1日
日本の段原紙輸出量は昨年88万㌧を超え、今年は100万㌧に迫る勢いにまで増加している。過去数年間で日本の段原紙生産能力は転抄・改造などを含め70万㌧以上増加した。製紙企業は需給を調整すべく段原紙の輸出を増加させている。
2017年は中国の経済発展と古紙の輸入禁止により段原紙不足が発生し、段原紙の輸出価格が大幅に上昇した。さらに19年には中国の古紙輸入量が減少した事で、古紙輸出価格が暴落し1桁台での輸出が続いた。20年には完全に輸入禁止となることから、古紙が余剰する事が懸念されインフラの維持の為の古紙買い支えと消費の維持が必要視された。 当時輸出向け段原紙生産を増やすことでフル操業し古紙の消費を維持することと、不採算な印刷・新聞マシンを通販など需要が堅調な段ボールにシフトすることは利害が一致していたといえる。
しかし、東南アジアに製紙工場が次々とつくられ、中国に代わる古紙市場として成長した昨今、古紙輸出価格が回復し余剰問題もなくなった。むしろ輸出原紙生産の為に古紙を多く調達する事は非常に難しい状況となっている。 国内の消費量以上に段原紙を生産し輸出する事は古紙をそのまま輸出する事と同じで国内の古紙ひっ迫を招く。数年前まで誰も予想しなかった深刻な古紙不足が起きようとしている。
この状況は台湾のこの数年間の動向をみると説明がしやすい。台湾は半導体を含め加工貿易立国で輸出が多い国だ。中国同様製品と共に包装材として段ボールが輸出されるため、国内消費量以上に段原紙を生産し古紙を輸入している。
その台湾では15年以降段原紙の増産は行われていない。しかし古紙の輸入量は5年間で2倍となっているのだ。
背景には17年以降、中国の古紙輸入規制によって中国向け再生パルプ及び段原紙の輸出量が急増し、古紙の消費量が増えたことが理由となっている。15年の再生パルプの輸出量は0㌧、段原紙は68万㌧だったが、19年はそれぞれ32万㌧ + 93万㌧(合計125万㌧)で54万㌧増加した。 一方中国向けに輸出した段原紙や再生パルプは国内還流しないため、台湾国内の古紙発生量は293万㌧から272万㌧と16万㌧減少した。
急激に段原紙と再生パルプの輸出向け製造が量増加した事で、原料となる古紙の輸入量も55万㌧から132万㌧と77万㌧約2倍以上増加する結果となった。
現在の台湾の段原紙・再生パルプの輸出量は生産量の34.1%に達している。日本の段原紙輸出量は増加したといえど100万㌧弱で生産量の10%程度に留まっている。しかし、日本は台湾の様に古紙を輸入していない。 2016年の日本の段原紙輸出量は35万㌧で段古紙輸出量は179万㌧(合計214万㌧)だった。20年の段原紙輸出量は88万㌧で段古紙の輸出量は193万㌧(合計281万㌧)で70万㌧近く増加している。このまま10%近い段原紙の輸出が続けば深刻な古紙不足が発生す事は容易に想像できる。日本も台湾の様に古紙を輸入する事を検討すべきなのだろうか。