■ 製紙の収益圧迫 何故原燃料価格は高騰しているのか
2022年2月5日
各製紙企業が3月期決算見込みを下方修正している。国際市場において天然ガス、石炭、原油の価格が上昇しており、製造コストが嵩んだ。 中華系製紙企業の21年第四四半期決算に於いても製紙の収益圧迫は顕著に表れていた。欧州ではウクライナ情勢も重なり天然ガス価格が過去最高値を更新している。 パルプ価格の高騰や通販需要拡大による包装資材需要の拡大と、脱プラニーズは紙パルプ産業にとって追い風となり、製紙各社過去最高益を記録したが、ここにきて原燃料価格の異常な高騰が製紙企業の収益に影響を及ぼし始めている。
昨今の原燃料価格の上昇は新型コロナ禍の収束が期待されるなか、経済活動の再開に伴い需要が拡大している事が背景にある。また国際情勢など複雑な要因が絡みつつ、皮肉にも世界の二酸化炭素排出削減に向けた動きも化石燃料の価格高騰要因となっている。
主要先進国は高いCO2排出削減目標を掲げており、特に石炭の使用に対しては厳しい目を向けている。結果石炭や化石燃料への投資意欲がそがれ、新たな油田や炭鉱の採掘が減少した。日本のメガバンクも21年6月に新たな石炭火力への融資を行わない方針を発表している。しかし、途上国は石炭依存率が高く経済成長も合いまって根強い石炭需要がある。エネルギー関連企業は石炭採掘投資へ慎重な姿勢を示している事が需給バランスを崩す結果となった。
原油に於いては、80年代~90年代に原油生産量の拡大から価格が下落した事で、産出量の拡大が抑えられたままだ。 さらにOPECは新型肺炎が流行し始めた当初、原油価格が暴落したことで生産量を縮小した。緩やかに減産量の縮小を行っているものの、先行きに不透明感があるとし大幅な増産は行わない方針だ。 またバイデン政権は気候変動対策を公約に掲げており、原油不足の中でもシェルガスの増産に踏み切れていない。イジェリアなどアフリカの産油国でも投資不足や武装組織によるテロリスクで生産が停滞していることに加え、大産油国であるロシアも増産余力がなくなりつつあるようだ。
国際エネルギー機関(IEA)は、経済協力開発機構(OECD)加盟国の昨年11月の原油在庫は7年ぶりの低水準とった事を発表した。
ドイツ政府は22年中に原子力発電を止め38年までに石炭、褐炭の使用を停止する事を発表している。再生可能エネルギーを50%にまで引き上げる目標を掲げているが、残りのエネルギーは天然ガスに依存せざるを得ない。さらに天然ガス採掘国であるロシアとの関係がウクライナ情勢の緊迫で悪化した事も価格の上昇要因となっている。
これら需給バランスの悪化は化石燃料の先物市場に投機筋による資金の流入を招きさらなる価格の上昇を招いている。原燃料価格の高騰は世界的なインフレ要因となっており、バイデン政権は1月下旬までに戦略石油備蓄から約4000万バレルの原油を放出したものの、原油高を抑制する効果をまったく発揮できていない。