■台湾で深刻な水不足 非常警報が発令 給水制限によって産業に影響
2021年5月10日
近年台風の進路が変わり、関東地区に上陸するようになった事によって、千葉など甚大な被害が発生した事は記憶に新しいが、昨年は台湾に於いても台風が一度も上陸しなかった。台風被害が出なかったことで農作物が豊作だった事などいいニュースもあったが、今年に入っても降水量が少ない状態が続いている為主要ダムの貯水量が低下、今年は一転、給水制限などの措置に踏み切らざるをえない状況に陥っている。
元来台湾は小さな島国であるためダムや地下水資源が少なく、真水の確保が難しい。気候によって数年に一回は水不足が発生するのだが、一度も台風が上陸しなかったのは過去56年で初めてだという。
台湾政府は台湾中部から南部の貯水施設で、水量が極めて危険な水準にまで減っていることから非常警報を発令。中部の主要ダムである徳基ダム(台中市)の貯水率は4月中旬時点で4.4%にまで低下し、一か月弱で底をつく見通しで工業地域への水供給を15%減らす事を決定した。
台中市と苗栗県、彰化県北部の一部地域では4月から生活用水に於いても週2日の断水を実施している。 他のダムも貯水率が下がっており、明徳ダム10.2%、鯉魚潭ダム8.4%、石岡壩27.8%、曽文ダム(嘉義県)11.6%、石門ダム(桃園市)30.2%、翡翠ダム(新北市)75.5%、日月潭ダム(南投県)33.4%となっている。台湾水利署(水道局)は南部・嘉義県、嘉義市、台南市、高雄市、北部・新竹県、新竹市を対象に減量給水、北部・桃園市、新北市林口区、中部・彰化県南部、南投県、雲林県を対象に減圧給水を行っている。
特に半導体製造は大量の水を使う為、影響が懸念されており、大手半導体メーカーのTSMCは給水車の配備を進めるなど対応に追われている。
製紙関連では、使用している水源が河川である為今のところ大きな影響はでていない。しかし貯水ダムの水がさらに減少した場合、使用制限などの措置も起こりうる。事実2015年の水不足の際は、時間あたりの給水量が制限されるなどの措置がとられ生産に影響した。
台湾では肺炎の影響で通販の需要が伸びたほか、世界的な半導体不足によって経済は活性化しており段ボール不足が続いている。今年はコンテナ不足によって古紙も不足がちだが、水不足も懸念材料となりそうだ。