■ 古紙輸出市況:コンテナ不足で物流停滞。古紙価格上昇
2020年11月30日
新型肺炎第三波の拡大とコンテナ不足により古紙の物流に大きな影響が出ている。中国・東南アジアでは既に成約済みのEOCCやAOCCの入荷が悪く、特にタイやベトナムでは古紙不足から地元古紙価格が200㌦を超えている様だ。
日本からの輸出も国慶節前あたりから海上運賃の値上がりや、Bookingが取りづらいなどの影響がでていたが、11月に入りすでに予約済みのBookingが船会社側からキャンセルされるなど古紙を運ぶ事自体が困難になってきた。
アジアのメーカーが納期を優先したスポットベースでJOCCに高値を付け、11月以降AOCC、EOCCを含め価格が20㌦ほど上昇した。
経済再開した中国と今なお感染が拡大し都市封鎖を再開する欧米に於いて輸出入量に偏りが発生した事がコンテナ不足の大きな原因となっている。豪州、シンガポールや釜山など主要トランジット港にも荷役待ちの本船が足止めされアジア航路全体の本船スケジュールも大きく乱れている。船会社は最も運賃の取れる中国へ空コンテナを回送する為Bookingを断り、特に運賃の安い古紙にはコンテナが回ってこない状況だ。海上運賃も急激に上昇し、9月末の数倍の水準まで値上がりしている。
コンテナが滞留している欧米に於いても都市封鎖の再開で古紙が集まらない上、中国向けを優先する為アジア向け古紙のBookingは敬遠される状況となっている。現在の相場はJOCC CIF VIETNAM $170-200(CY12.0-14.0/kg) CIF TAIWAN $150-180(CY 12.5-14.5/kg)とドル価は上昇した。
しかし円高基調である事及び海上運賃の大幅な値上がりによって古紙問屋店頭ベースの円貨は下落。今後さらに海上運賃の値上がりが予想されるばかりかBookingそのものも取れない上、船会社からキャンセルされ契約履行できない可能性があり高値とは言え新規の売り契約には手を出しづらい。輸出商社は「Bookingが取れれば出荷する」などの条件を付けて見積をせざるを得ない所まできているのが現状だ。
コンテナ問題は少なくとも旧正明け以降まで回復しないとみられ、古紙不足からさらにドル価が一人歩きしドル価高円価安が進行している。 日本国内はGoto政策もあってか段ボールの消費も一時に比べれば若干回復したように見える。原紙の輸出も堅調である事から、10月~11月国内向け古紙出荷量は上向いた。しかし12月は各社休転に入る事や年末年始休暇、さらに海上運賃の値上がりは原紙輸出の足枷となる為、輸出・国内出荷共に鈍化する可能性が高い。
一方アジア圏の原紙価格はかなり強含むと思われる。先日の韓国新大洋紙業の火事に中国の古紙輸入禁止による原紙需要が重なる。コンテナ不足や本船スケジュールの乱れは原紙輸出にも影響をきたしており、さらに古紙の在庫水準が低い中でドル建て古紙相場は上昇している。少なくとも海上運賃は$20~30/㌧程度値上がりしており原紙価格へ転嫁される事が予想される。古紙高騰と需給のタイト感、海上運賃の高騰など値上げ要因が多数重なっており、近々アジアの中芯価格は400㌦を超える水準まで回復するのではないだろうか。