東南アジアへの製紙拠点の移転:ベトナムは有力な進出先として成長

  ■ 東南アジアへの製紙拠点の移転:ベトナムは有力な進出先として成長

2019年2月19日

1月23日、丸紅100%出資の製紙工場をベトナム南ホーチミンに設立し工事に着工したことを発表した。

段ボール原紙を製造し、2020年の商業稼働、22年のフル生産時には年産35万tを予定している。 総工費120憶円を投資するこの工場は年間売上200憶円を目標とし、今後成長の期待できるアセアンとベトナムの経済成長に伴う紙の需要増、中国に代わる紙の生産拠点の確保とTPP(環太平洋経済協力協定)の締結を睨んでのものだ。 

ベトナムには数多くの日系コンバーターも出店しており、製紙では先日双日がベトナムのサイゴンペーパーを買収したことが記憶に新しいが、丸紅は出資している興亜工業の製紙ノウハウと自身の販売ネットワークを活かし事業拡大を目指す。 

(正隆社)も工事は遅れたものの2019年1月ベトナム製紙工場の運転を開始した。 ベトナムは10年ほど前からチャイナプラスワン、第二の世界の工場として注目を集めてきた。 

今後のベトナムにおける板紙製紙工場の建設は正隆社100万t、Chang Yang Paper(玖龍社HD) 50万t Giao Long Paper 20万t等外資系企業の出資も含め2025年までで466万tの増産が発表されている。 

またベトナム以外の東南アジアでも増産計画は増えておりマレーシアも製紙の投資対象となっている。 

マレーシアでは王子HDが45万t、MUDA社が27万t、景興紙業が140万t、理文社が125万t、現在発表されているだけで400万tの段原紙及び古紙パルプ設備の増産計画がある。

兼ねてより人件費高騰や政策的不安要素から世界の工場たる中国の代替え国が模索されてきたが、製紙に於いても中国の環境規制と2020年問題を見据えて今後5~10年で本格的な製紙産業の移設が盛んになってくると思われる。 

その対象国としてアセアンの一員で経済成長も堅調なベトナムは有力な候補の一つだが、韓国系電子メーカー(LG社)やナイキ社、日系の自動車産業や食品メーカーも数多く生産拠点を建設し、それに伴いパッケージメーカーもベトナムに進出してきた。 

日系段ボールメーカーではセッツカートン、ダイナパック、トーモク、OJITEXを初め大手一貫メーカーだけでなく独立系コンバーターもベトナムに段ボール工場を建設している。

電力や道路建設などのインフラ投資も進んできたことから本格的な世界の製造工場としてベトナムは発展していくだろう。 

2018年~2025年稼働予定のベトナム増産計画(板紙)

ベトナム自体は中国と同じ社会主義共和国で人口約9,370万人、331.2K㎡、GDP3,598憶ドル、一人当たり4012ドル(平均年収44万円程)、平均年齢は29.8歳と若く、就業者に占める自営業率は65.40%で意外にも世界3位の自営業率だ。 国土は南北に細長く、北は中華人民共和国、西はラオス、南西はカンボジアと国境を接する。東は南シナ海に面し、フィリピンと相対する。 

板紙の消費量は2018年現在359万t、内295万tが国内生産となっており、内75万tが輸出され、139万tが輸入、67万tの需給ギャップがある。 GDPは毎年5.8-6.8%程度成長している。

単純計算で2025年に内需だけで539万t、今から180万t以上増加する見込みでアセアン全体が経済成長する中、東南

アジア全体での紙の消費量増加はかなりの期待ができると思われる。 

長期的視野で見た時の東南アジアへの製紙産業の移転は必須であると思うが、一方で中国が世界の工場たる生産国から消費国、古紙の発生国となっていくことも同様だ。

中国という古紙の巨大マーケットの将来性が期待できない中で、東南アジアでの製紙産業の発展は新しい消費地として期待したい。 しかし将来的に中国の国内古紙が内需を賄うだけでなく、新たな消費地である東南アジアへ輸出される日がくる事も否定できない。 

今後日本の少子高齢化は進み、紙の消費、古紙の発生共に減っていく中で、日本の古紙はどのような位置づけになっていくのだろうか。

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