米国通商代表部カナダ産木材の輸入関税の増税を示唆 さらなるインフレと木材価格高騰懸念

  ■ 米国通商代表部カナダ産木材の輸入関税の増税を示唆 さらなるインフレと木材価格高騰懸念

2021年5月29日

米国通商代表部はカナダ産木材が不正に補助金を受け米国に輸入されているとし、再度関税を18.32%に引き上げるべきだとの考えを示した。 トランプ政権によって増税されたカナダ木材への完全は、昨年12月に24%から約9%に減税されていた。

米国内では新型肺炎によるインフレと住宅需要の増加によって木材が不足し価格が高騰している。さらなる増税は住宅建設コストを増加させ、工事の遅れや中止となる懸念に繋がっている。最終的に米国国民の負担が増えると批判が集まっている。

2017年、北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉を公約したトランプ政権は、カナダが針葉樹材の輸出に不当な補助金を支給しているとして、アンチダンピング関税(AD)および相殺関税(CVD)合わせて9.38%~24.12%の相殺関税を課すことをと決定。 

その後カナダ政府の要請に基づきWTO紛争処理小委員会が設置され、2020年8月24日、米国の措置はWTOの補助金および相殺措置に関する協定に違反しているとの裁定を行った。

米国はWTOの判断を不服として上訴していたが、12月に関税を見直す事を発表し、平均9%ほど(4.93%キャンフォー社、~19.86%レゾリュート社、4.23%アービング社)に減税していた。

 新型肺炎の影響によりインフレ懸念 

17年当初、特に高関税を課されたのはカナダのウェスト・フレーザー・ミルズ社で24.12%、次いでキャンフォー者社の20.26%。米国市場の31.5%がカナダ産の木材であることから50億ドル相当の木材が(相殺関税の)影響を受けることとなった。

しかし、針葉樹材の主要生産地であるブリティッシュ・コロンビア州での森林火災による供給量の逼迫や、米国住宅市場の回復、米国におけるハリケーン被災地域での復興需要など、木材価格が高騰しても買い手が見つかるという状況が続いている。

さらに新型コロナウイルスの感染拡大を受けた空前の住宅ブームによって、木材価格が記録的な高値となり、米国経済に急速に広がるインフレ懸念の震源となっている。消費活動が抑制されていた反動で住宅需要や工場生産が爆発的に拡大したのが原因の様だ。

新型肺炎が流行する前、1000ボードフィート当たり200〜400ドルの範囲で取り引きされていた木材価格が今月一時1700ドルを超えた。 全米住宅建設業者協会(NAHB)の推計によると、針葉樹木材の不足によって価格は1年間で3倍に膨れ上がり、住宅一件あたりの平均コストが36,000ドル増加している。

またリーマンショック時のサブプライム問題で米国の不動産市場は急激に縮小。ルイジアナ州など木材資源が豊富な米南東部では、約40%の製材所が、この十数年でなくなった。

 国内の製材所不足も木材価格の高騰を助長している。さらに米国内で生産される木材の50%が民間管理による植林木材で、原木は成長すればするほど価値が上がる為、業者は早く伐採することを望まない。価格上昇が急速なほど、伐採を渋る傾向が強くなる。

 バイデン政権は極端なインフレや住宅価格の高騰を防ぐため、木材関税の撤廃に向けて進みたいのが本音だ。

しかし米商務省は先週、カナダ政府の国内の林業への補助金など米国にとって不公平な政策に対抗するためには、関税を18%に引き上げるべきだとの考えを示している。

米国森林資源開発省大臣も関税の増税には反対しており、国内の建設業界やカナダからも批判の声が上がっている。バイデン政権も一枚岩ではなく複雑な対応を迫られそうだ。

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