■ トルコ 急激な通貨安でインフレが加速 紙価格急騰に出版社存続危機
2022年6月23日
世界的インフレが発生する中、トルコ政府の利下げ政策によってトルコリラが暴落し消費者物価指数が昨年対比70%以上上昇する事態が発生している。エルドアン大統領は経済刺激政策の一環で、政策金利を引き下げた。 しかし21年9月から12月にわたり連続利下げに踏み切り、19%から14%と4カ月間で5%の利下げは未曾有の通貨安とインフレを招く結果となった。さらにロシアのウクライナ侵攻によって原燃料価格が高騰し、物価の上昇に拍車がかかった。 分野別にみると電車やバスの運賃などが105%、食料品が89%と生活必需品が2倍近くにまで高騰しており、政府に対する不満が強まっている。 さらに原材料価格の動向を示唆するPPIは3桁の数字で上昇しており、企業がコストを吸収し価格上昇をなんとか抑えようとしているが、インフレ圧力は止まる気配が無い状態だ。
紙価格も例外ではない。トルコは本来製紙産業に乏しい国でその消費される紙の殆どを輸入に依存している。インクや製本用接着材なども同じく輸入品だ。 昨年上質書籍用紙は600€で取引されていたが、欧州に於いても原燃料価格の高騰で値上げが相次ぎ、今年は1150€を超え前年度比平均168%も大高騰しているところにトルコリラの暴落が重なった。 トルコ国内の電気代も高騰している事から、トルコの出版業界は大打撃を受けている。 通貨安によりトルコ国民の購買力は弱まり、生活必需品を買う事で精一杯の状況で、22年1月の出版物販売数は前年度同期比20%減少した。売れ筋の本も、原材料の高騰から第二判が発行できない状況だ。また書籍の違法なPDF共有も横行しており、出版業界は存続危機に陥っているという。 やむを得ず低品質な本を生産するなど、トルコの生活水準は確実に低下している。
企業の収益が失われ、賃金が低下。購買力が弱まっているにも関わらずインフレが発生した事でトルコは貧困への道を歩みつつある。トルコの現状は今の日本にとっても他人ごとではない。政策的失敗による失われた30年。低金利政策と通貨安。賃金の低下など今日本で起こっている事はトルコのそれと酷似している。