■ 送24年問題 コンテナ輸送に大きな影響懸念
トラックドライバーにも時間外労働の上限規制が適用される24年問題の長距離物流響への影響が懸念されている。 物流会社からも運賃の値上げ、運送時間の制約など本格的に24年に向けた対応要求が来るようになった。 この24年問題は、国内のトラック輸送よりも、特に古紙の輸出に掛かるコンテナ輸送業界に大きな影響を与えそうだ。
コンテナ輸送はトラック輸送と異なり、空バンを港でピックアップし、指定場所でバン詰め、また積み出し港のコンテナヤードまで戻ってくる。 帰り荷という概念はなく、往路・復路共に同じ荷主、同じ貨物の為のチャーター便となり、ドライバーの拘束時間も長い。さらには全ての運送業者が空バンピックとCY搬入の為に港へ集中する為、道路混雑は大きな問題となっている。港湾前の渋滞で数時間待たされる事はざらで、ここに労働時間の制約が始まると、港湾前に並ぶためにドライバーの交代要員を別途雇用する必要がでてくる。
古紙のドレー輸送は運賃こそ安いが、バン詰め時間が短く貨物の破損補償リスクもない。また早朝作業が多い為、5~10年ほど前までは時間外の小遣い稼ぎ感覚で運送を引き受けてくれる業者も多かった。しかし、昔の様に長時間働いてまでお金を稼ぎたいという人は少ない。ドライバーの高齢化も進み慢性的な人手不足に苦しむ運送業業者の中には、この24年問題で法的に労働時間が制約されると、運賃の安い古紙の運搬から撤退せざるを得ない業者も出てくるだろう。 古紙運賃はタリフの3~4割と言われており、通常貨物にそん色ない運賃にするためには、倍以上の値上げを行わなければならない。 昨今の燃料価格の高騰もあって事実上お断りの価格を提示してくる業者も出てきているのが現状だ。
古紙は価格柔軟性の非常に高い商材で、コロナ初期の海上運賃急騰の際も従来の20倍近い運賃上昇すら吸収した。しかしこの24年問題にかかる国内ドレー運賃の値上がりは、日本特有の問題であり、売値に転嫁するのは非常に難しいだろう。
港湾付近の混在問題に対しては、国交省も抜本的対策として「PORT2030」という港湾中期政策を打ち出し、AI導入による港湾作業の効率化、24時間稼働を目指している。 具体的には、IOT情報通信技術を活用した、港湾のスマート化、自働化や遠隔操作の技術導入に加えて、貨物の情報などのデータを集約して、ビッグデータとして管理。それを人工知能で解析することによって、コンテナ蔵置計画の最適化を図るとともに、無人オペレーションによって24時間稼働を実現するというものだ。 既に中国や米西海岸の一部の港湾に於いては、遠隔操作や自動オペレーションが導入され高度な効率化が実現しているが、AIを活用した日本の取り組みは世界初で、実現すれば諸外国に遅れをとった日本の港湾の活性化につながる。
技術的問題は既存技術の応用によって十分対応可能で、トヨタ自動車が運営する愛知県飛島ヤードでの無人化実証実験も終えている。 しかし、実際の道のりは非常に厳しい。港湾労働組合の強烈な反対もあり、国土交通省がPORT2030を発表した翌、19年4月に全国の港湾で大規模なストライキが行われた。最低賃金の引き上げや安定雇用の約束などを求めたもので、港湾作業が自動化されれば、「自分たちの仕事が失われる」というのが彼らの主張だ。 実現目標は2030年だが、こういった既得権者を説得し、港湾の自動化を進めなければ今後の輸出入物流問題を解決するのは難しいだろう。ひいてはアジア圏の物流網から敬遠され、寄港本船の減少など国際競争力を失う事態を招くかもしれない。