紙パルプ従事者のための貿易実務講座 ③ インコタームズ(貿易条件)

  ■ 紙パルプ従事者のための貿易実務講座 ③ インコタームズ(貿易条件)

インコタームズとは?

「インコタームズ(Incoterms/International Commercial Terms)」とは、国際商業会議所(ICC)が貿易取引における費用負担・範囲などの取引条件を定めた国際規則です。

貿易取引を行う際に売手と買手の貿易条件に関する共通認識として定められたもので、それぞれが負担するコストとリスクを明記しています。またそれぞれの貿易条件は、「CFR」「FOB」のように、アルファベット3文字で表されるのが特徴です。

インコタームズは2020年に最新版へと改定され、その条件は全部で11種類あります。 「すべての輸送手段に適した規則」と「船舶輸送にのみ適した規則」の2つのグループに分けられ、その条件ごとにEグループ、Fグループ、Cグループ、Dグループの4つに区切ることができます。

すべての輸送手段に適した規則

EXWEx Works工場渡
FCAFree Carrier運送人渡
CPTCarriage Paid To輸送費込
CIPCarriage And Insurance Paid To輸送費保険料込
DAPDelivered At Place仕向地持込渡
DPU *Delivered at Place Unloaded荷卸込持込渡
DDPDelivered Duty Paid関税込持込渡
*インコタームズ2020では、2010にあった「DAT」が廃止され、「DPU」が新設された。

船舶輸送にのみ適した規則

FASFree Alongside Ship船側渡
FOBFree On Board本船渡
CFRCost and Freight運賃込
CIFCost, Insurance and Freight運賃保険料込

Eグループ  輸出者の工場で引き取る(買主の負担範囲が最も大きい)条件

■ EXW /EX Works (工場渡)
売主(輸出者)が指定した自社の工場・倉庫などで、商品を買主(輸入者)側に渡し、その後の輸送に関するリスク・費用をすべて買主が負担する条件です。輸出国での輸送手段(トラックなど)も買主が手配し、積み込み作業における危険負担も買主側にあります。ただし、関係省庁からの輸出認可取得や輸出通関時の情報提供に関する助力義務は、輸出者側にもあります。

Fグループ  輸出地国内で危険負担が移転する条件

FCA(運送人渡)/Free Carrier
輸出地の指定場所で、買主が指定した運送人に商品を引き渡した時点で危険負担・費用負担が移転する条件です。引き渡し場所が売主の施設内の場合は、売主が積み込みまでの責任を負いますが、それ以外の場所の場合、売主側は荷降ろしなどの責任を負いません。輸出通関手続きは売主が手配します。

■ FAS(船側渡)/Free Alongside Ship
指定船積港で本船の船側(CY等)に商品を置いた時点で危険負担・費用負担が買主に移転するという条件です。輸出通関手続きは、売主側で行いますが本船への積込費用(THC)は買主負担になります。

■ FOB(本船甲板渡)/Free On Board
指定船積港で本船の甲板上に商品を置いた時点で危険負担・費用負担が買主に移転するという条件です。輸出通関手続費用と本船ヘの積込費用(THC)は売主側で負担します。

Cグループ  売主が輸入地の指定場所(主に港湾や国境地帯)までの費用を負担する条件

■ CPT(輸送費込)/Carriage Paid To
CPTは、輸出地において売主が指名した運送人に商品を引き渡した時点で、危険負担が移転する条件です。ただし指定仕向地までの輸送費用は売主が負担し輸出通関手続きも売主が行います。

■ CIP(輸送費保険料込)/Carriage and Insurance Paid To
CIPもCPTと同様、輸出地において売主が指名した運送人に商品を引き渡した時点で、売主から買主に危険負担が移転する条件ですが、輸出通関手数料や指定仕向地までの輸送費用だけでなく、保険料についても売主が負担します。

■ CFR(運賃込)/Cost and Freight
危険負担の移転はFOBと同じ本船甲板上ですが、指定仕向港までの商品の運送費用は売主が負担する条件です。
C&Fと表現されることもありますが、契約書などでは正式名称のCFRと記載します。

Dグループ  売主が輸入地の指定場所までの危険・費用負担する条件

■ DAP(仕向地持込渡)/Delivery at Place
輸入国の指定仕向地において、船上など輸送手段上で危険負担・費用負担が買主に移転する条件。荷降ろし以降のリスク・費用や輸入通関費用は買主が負担します。

■ DPU(仕向地荷下渡)/Delivered at Place Unloaded
輸入国の指定仕向地に於いて、商品の荷降ろしを行った後に危険負担・費用負担が買主に移転する条件です。荷降ろし以降のリスク・費用を買主が負うDAPとは異なり、売主が荷降ろしまでのリスク・費用を負担する。なお、輸入通関費用は買主が負担します。

■ DDP(関税込持込渡)/Delivery Duty Paid
輸入国の指定仕向地での輸入通関後に、危険負担・費用負担が買主へ移転する条件です。つまり、輸入通関手続きの費用や関税、その他の税金も売主の負担になります。最も売主の負担が大きい条件です。

インコタームズは輸出入当事者の商慣習が国によって異なることから発生する取引条件の誤差や、紛争・訴訟を防止する目的で、定型取引条件の解釈に関する国際規則を1936年に制定したのが始まりです。 
その後、国際貿易取引の実態に合わせるため、1953年、1967年、1976年、1980年、1990年、2000年、2010年、2020年に改訂が行われています。2020年の改定では、取引実務上の進化を反映し、義務項目の並び替え、「まえがき」の充実化、「利用者のための解説ノート」の設置、「義務項目別の対比」の設置、「費用の分担」項目における各種費用の集約化がなされました。また2010年版で登場したDATがなくなり、新たにDPUが盛り込まれています。

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