■ 緊迫するウクライナ情勢 日本経済・紙パ業界への影響
2022年1月30日
ロシアがウクライナ国境周辺地域で軍備を増強しており、NATO加盟を希望しているウクライナとの間で緊張状態となっている。 ロシアはウクライナのNATO加盟を拒否する様欧州側に求め、欧州連合はこれを拒否した。欧州諸国はロシアのクリミア半島(ウクライナ領)の強制合併を含め警戒感を示しており、米国も8500人の米兵派遣準備を進めている。
ウクライナは東欧州とロシアの中間に位置し、黒海にも面している。1991年ソビエト連邦の崩壊に伴い国家として独立した。ロシアとの軍事同盟を結びつつ、欧州連合とも提携している。事の発端は2014年、親ロシア派のヤヌコーヴィチ政権が崩壊し、新政権が発足した。ロシアはこれに反発し「ロシア自国民保護」の目的でクリミア半島に軍事進攻、政権交代と住民投票によって独立させ、これを一方的にロシアと併合した。クリミア半島にはロシア黒海艦隊の基地があり、ダーダネルス海峡を経て地中海へと抜けられるため、ロシアにとって軍事的な要衝だった。クリミア併合によりウクライナ国内情勢が悪化。新ロシア派と欧州派での対立が過熱し戦闘状態となっていた。
一方国連総会は実施された住民投票が、ウクライナ政府が関与しておらず、ウクライナ法に違反すること、投票結果そのものが操作されていた事などを理由に、クリミア半島の併合はロシア側の違法占拠であり、国境の変更は認めないと賛成多数で採択した。日本もウクライナ東部の情勢不安定化に関わっているとみられる人物などの資産凍結措置をとっている。
2019年にウクライナは将来的なNATO加盟方針を発表、親ロシア派と停戦合意を結んだ。しかし21年より停戦協定違反が多発し、小競り合いによって死傷者が相次いでいる。また21年4月にロシア軍がウクライナとの国境付近に軍を展開。ウクライナのNATO加盟を認めない方針を表明、NATO側にも加盟国をこれ以上増やさない様に要求している。天然ガス価格の高騰はロシア側が欧州への供給量を絞り圧力を加えている事が原因だとする憶測も飛んでいる。
1月30日、米国はウクライナ周辺への米併派遣と、ロシアがウクライナへ侵攻した場合、経済制裁を加えることを明言した。
21年の日本とロシア及びウクライナの貿易総額はそれぞれ約1兆5,000億円、8,000億円だった。貿易総額全体に占める割合は1.8%、0.1%に過ぎない。
紙パルプ関連項目(47類及び48類)でロシアからの輸入額が最も大きいのはNBKPで55億円、重袋用クラフト紙,9800万円、サルファイト包装紙1,000万円。ウクライナからの輸入はラベルや通信用カード類で年間120万円程度に留まる。ロシアへの輸出額は紙テープ類が最も多く9億3,000万円、続いてトイレットペーパー6,700億円、カーボン紙5,670億円となっている。ウクライナへの輸出額は年間総額で4,000万円程度となっており、直接的な経済的影響は少ないと思われる。
しかし石油・天然ガスなどエネルギー価格が上昇する可能性や、西側諸国とロシアの間の相互の報復制裁が激化し、国際貿易、取引支障やサプライチェーンの混乱など国際経済全般に影響が拡大する可能性は大きい。