■ 不足する新聞古紙 新聞消費量の減少より古紙発生量が大きく減少するワケ
2021年12月31日
新聞古紙の発生量が減少の一途をたどることは、世界共通の明確な事実として認識されている。 デジタル化や電子書籍の普及が進み新聞・雑誌を含む印刷物の需要は低迷し、上物古紙や新聞古紙の発生量は顕著に減少した。 さらに新型肺炎の流行によって直接接触の新聞は敬遠され、街頭に人がいなくなった事でフリーペーパーも手に取られなくなった。イベントやスポーツが中止となりスポーツ新聞も壊滅的なダメージを受け、新聞需要の減少を加速させている。
EUでは新聞を含む出版社、オフィス用途、商業印刷などの需要は劇的に減少し19%以上の落ち込みとなった。オーストラリアでは60社もの地方新聞社が紙媒体での発刊を停止しWeb配信に切り替え、数十社のスポーツ新聞社が倒産を余儀なくされたという。中国においても電子メディアの普及に於いて新聞や書籍等印刷用紙の需要は年々低下している。特に新聞の需要減は顕著で 2014年の新聞生産量は358.5万㌧であったが20年には100.9万㌧まで減少し、年間平均成長率は▲19.05%となっている。
21年は新聞の需要が若干回復したが、古紙の輸入が禁止になった事で生産能力自体が縮小している為、原紙の輸入によって補う事となった。 主な輸入元は木材資源が豊富なロシア、カナダ、スゥエーデンからの輸入となっており上記3国で全体の6割を占める。 新型肺炎が落ち着き、経済が正常化しても一度デジタル化された新聞愛読者は再度紙媒体の新聞を購入する事はないだろう。
日本の新聞用紙生産量は‘07年の389万㌧を境に年々減少を続けており、’20年の生産量は206万㌧とピーク時の半分近くにまで減少している。特に2013年以降毎年2~4%ずつ減少しており、‘20年は対前年度比15%近く減少した。 新聞古紙の発生量も新聞消費量と同様に減少しており、’13年に410万㌧あった発生量は、20年に244万㌧まで減少している。対13年比でみると新聞生産量が64%、新聞古紙の発生量が59.5%と生産量の減少量を上回って減少している。数量にすると約50万㌧も多く古紙の発生量が減少したこととなる。
本来新聞古紙の発生量が、新聞用紙生産量よりも多い理由には折込チラシの存在がある。新聞と共に配布されたチラシが、古紙として新聞と一緒に回収されることで、必然的に新聞古紙の発生量を嵩増ししている状況となっている。2013年時点では新聞古紙の発生量は用紙の生産量より88万㌧多く、新聞古紙の輸出量が56万㌧であった事を考えると、まさに余剰した分が輸出されていた状況だった。しかし2020年ではその差は38万㌧にまで縮小しており、古紙輸出量も減少したものの39万㌧が輸出されている事から国内の新聞需給がひっ迫する原因となった。
新聞古紙発生量の減少が生産量の減少より大きい理由は、言うまでもなく折込チラシの減少に起因する。 企業は紙媒体のチラシを減らし、WebやTV、アプリなどでの広告・集客に移行している。 全国スーパーマケット協会時計によると、全国のスーパーの折込チラシ利用率は2013年に96.4%であったが、2020年には90.3%にまで減少した。発行回数も週平均2.1回から1.54回まで減少しており、新聞古紙に混入するチラシの数量も大きく減少している事が予想できる。 さらに20年の折込チラシ市場規模は新型肺炎の流行によって広告を発行する企業が減った事で、3,559億円と前年度比9.1%縮小した。
日本からの新聞古紙の輸出量も年々減少傾向にある。最も輸出が多かったのは18年の55.3万㌧で、中国向けが50万㌧と9割以上を占めた。しかし中国の古紙輸入規制により輸出量は大きく減少し、21年は22万㌧前後となる見通しだ。 段ボール古紙とは異なり中国に代わる巨大な市場は未だ出てきていないのが現状だ。
インドネシアやタイなど一定の引き合いもあり、日本の国内建値より高い価格での販売は可能ではある。しかし我々輸出商社としては発生減から数百トン規模で契約できる古紙問屋が少ない事から、契約不履行のリスクを冒してまでやらなくてもいい。というのが本音だ。
中国輸入規制後の日本新聞古紙の主な輸出先は韓国で、特に21年は年間14万㌧と前年度比3割以上増加した。全体比率では65%に及ぶ。韓国側の輸入通関統計によると、米国首位であった輸入構成比が日本からの輸入に置き換わり53.7%に達している。 一方で新聞古紙輸入量そのものは17年の75.4万㌧から46万㌧と大きく減少している。
新聞古紙の韓国向け輸出が急増した理由は、韓国の製紙企業が夏終わりごろから強い購買意欲を見せ、10月には雑誌でCY22~24円、新聞27~28円、シュレッダーでさえ20円と他国より圧倒的に高い値段をつけた事が要因だろう。また、1~2コンテナ単位で雑誌や新聞、シュレッダーを同じ船積みでまとめて取ってくれるフレキシブルさや、韓国向けは比較的海上運賃が安い事も利点だ。さらに、輸出商社から独立した韓国系ブローカーが急増したことも理由だと考えられる。 わざわざリスクを冒さず、日本のCY渡しで韓国系ブローカーに転売でき、現地に顔の効く彼らに任せた方が直接売るより高く売れる所も、ブローカーの存在意義を確かなものにしている。
韓国で新聞・雑誌古紙の価格が上昇した理由は、韓国国内でも段ボール古紙価格が上昇し新聞古紙の価格を上回っていたことが背景にある様だ。 韓国の行政回収でも段ボール、新聞など古紙は分別して排出されるが、古紙問屋は同じパッカー車で回収に行くため結局混ざってしまい、古紙問屋での再分別が必要となる。 段ボール価格が高くなりすぎると、古紙問屋は新聞・雑誌を分別せず、高く買ってもらえる段ボールに混ぜて販売するため必然的に新聞、雑誌の発生量が減ってしまう。 さらに製紙企業に納入される古紙の品質は非常に悪く、製紙企業側も必要以上に水分引き(10~20%)を入れる為、製紙と古紙問屋の関係は決していいとは言えない。そういった背景が韓国の製紙企業が安定的に品質の良い古紙を購入する事を難しくしているという。
しかし11月に入り、あまりにも高くなりすぎた輸入新聞古紙では採算が合わず、韓国系製紙企業は一斉に購入を見合わせるようになった。 韓国国内では段古紙価格が大きく軟化した事を受け、古紙問屋が段ボールから雑誌と新聞を分別し始め、入荷量が増加した事が価格を下げる要因となった様だ。段古紙価格の軟化は年明け旧正月付近まで続くと見られ、韓国勢の新聞・雑誌購入価格も現在の価格より3~4円程度軟化するのではないかとみている。