■ 古紙の国際相場低迷、古紙国内建値の適正価格はいくらか
2019年10月
過去最高値を付けた古紙価格と打って変わり今年は古紙の輸出相場が下落、今後中長期的に相場が低迷するとの予測もある。
日本の段ボール原紙価格は据え置かれたままだが、各流通商社がエンドユーザーより値下げ交渉と、古紙建値を18円に据え置いている理由の説明を求められることがあるとの事だ。 二度の値上げ前の国内段ボール古紙建値は15円であり、18円に改定した際もインフラ維持という観点よりも高騰する古紙輸出価格を理由に安定調達を目的とした説明であった。
世界相場が下がったのだから国内調達価格を下げるべきだとの声も多く、10月から年末にかけて来年度の飲料関係等原紙入札もあり価格を維持する製紙メーカーは慎重な対応を迫られている。
この段ボール古紙18円という価格は古紙の回収インフラ維持の為に適正な価格なのか。 様々な意見があるかとは思うが、個人的には現在の市況を鑑みれば逆に「安い」と考えている。
国際的に安いものを日本だけが高く買っているのであれば経済的観点から見て当然高いという話になるが、インフラ維持という観点からみるならば十分とは言い難い。 事実建値を維持している現状でさえ、市中では古紙問屋の買い付け価格が一部逆有償化し、回収を断っている所さえ出てきておりインフラが維持できなくなり始めている。
建値が上がったのになぜ回収コストが合わなくなったのか。背景には数年前国内建値が15円であった時、古紙の輸出相場は店頭16円~20円前後であり2割近くを輸出する古紙問屋の平均販売単価は16-18円前後だった。 しかし今年の輸出平均相場は店頭7-10円、直近は5円を下回り始めている。
建値は18円と数年前より高いが、輸出価格が低すぎる為平均売価は14円を割り込む所まで落ち込んでいるのが実情だ。
古紙の回収コストは発生量や回収頻度、距離等諸条件によって大きく変わるが、一般的に人件費とガソリン代に車両償却費用を足すと日に3-4t回収してくるパッカー車の回収コストは大よそkgあたり10円位。 プレス賃は2~3円/kgと言われている。
持込や無料の回収もあるため端的には言えないが平均販売価格が14円を割り込むと古紙問屋の採算は合わず有価での回収が難しくなってくる。 さらに働き方改革による賃金UPと長時間労働の制限は古紙回収業界にも影響を及ぼしており、人材確保と法令尊守の観点から運賃を別途請求、あるいは回収頻度等の条件見直しせざるを得ない状況だ。
また日本の直納、代納のシステムによって古紙問屋の仕入れ単価が思う様に下がらない問題も起きている。 本来在庫と価格のバッファー的役割を担ってきた直納問屋が、代納問屋を守るため国内建値相当で代納玉を買い支え自らの回収古紙は輸出に回している。 扱い量が多い大手問屋程必然的に輸出量は多くなり採算が悪化。一方で国内建値にて買い支えられた代納は危機感が薄くバラ古紙回収価格に対する値下げ意欲が薄い。
そういった代納問屋の仕入れ価格維持は市場全体の価格調整の足枷となっており、大手問屋を苦しめている。 さらに製品販売不調による製紙メーカーの古紙数量カットも重なり、この市況での輸出増はさらに古紙問屋の平均売価を下げ死活問題となっている。
現在の板紙市況は古紙安、原紙在庫増、需要悪の条件悪によりユーザーからの値下げ圧力は強まっている。 しかし今後1-2年程この輸出古紙市況の低迷が予想され、もし国内古紙建値が下方修正されれば世界に誇る古紙回収システムの維持は難しくなるのではないだろうか。