■ 22年年末から23年上半期で全世界約1,600万㌧の段原紙マシンが稼働 供給過剰に懸念
アジアの古紙価格、中国向け段原紙価格の回復遅れ要因となる懸念材料は、近年の過剰投資による段原紙供給過剰問題もあると考えている。 世界各国の製紙企業が発表するプレスリリースをまとめると、2022年年末から23年の上半期までに全世界で稼働を開始する段原紙マシンは、合計1600万㌧を超える。(22年12月~23年上半期稼働段原紙一覧参照) 中国の古紙輸入禁止に起因して、中華系製紙企業が東南アジアに新マシンを建設した事に加え、米国では通販需要の拡大や国内での古紙利用促進を目的にテストライナーの増産が進んだ。
また欧州に於いてもコロナ禍に新聞需要が減少し、次々と段原紙への転抄が発表されていた。 今年上半期までに米国に於いて215万㌧、欧州で350万㌧、東南アジアではマレーシアのナインドラゴンを始め245万㌧が稼働予定となっており、中国でも590万㌧ものマシンが動き出す。 それら抄紙ラインの稼働がこの半年間~1年に集中している状況だ。
これら新マシンの稼働は現在公式に発表され把握できているものだけを纏めたもので、インドなどの途上国や非公表なもの、新聞に記載されていないものを含めるとさらに多くの製紙ラインが稼働する事は間違いないだろう。 世界の段原紙消費量は毎年3%ほど成長しているものの、1600万㌧という数字は現在の全世界生産量の6~7%ほどの規模感となるため、一時的に強烈な供給過多状況を招きかねない。
日本に於いてもこの数年間、転抄や改造による生産能力の拡大が行われ供給はやや過剰気味、昨年の段原紙輸出量は100万㌧を超えた。世界の段原紙需給は日本の需給、ひいては原料となる古紙価格にも影響を及ぼす為、注視が必要だと感じている。