■ 大興製紙が会社更生法申請 負債総額約140億円 レンゴーが再生支援検討
2021年1月18日
富士市にあるクラフト紙メーカーの大興製紙は1月15日会社更生法の適用を申請し、監督命令兼調査命令を受けた。負債総額は債権者310名に対して約140億800万円。
穀物やセメントを入れる袋などに使われるクラフト紙の国内需要の落ち込みと、原材料である石油とパルプの高騰、米中貿易摩擦による輸出向け包装紙の需要減だ。
最終損益は2017年3月期から、営業損益は18年3月期から赤字に陥った。そこへ新型肺炎の流行により売り上げが減少し資金繰りが逼迫したことが独自の再起を諦める原因となった。 20年3月期の業績は売上高が121億円、最終損益は18億円の赤字だった。
経営陣が総退陣し第三者が管財人となる従来の会社更生と異なり、大興製紙は現経営陣が再建を目指す「DIP型」を採用している。 主要取引行のみずほ銀行と静岡銀行から10億円超の融資を受けて経営の立て直しを計るが、国内包装業界最大手であるレンゴー社の助けを求める。 現在もレンゴーグループの日本マタイ社などが同社のクラフト紙を購入しているが、傘下に入り一貫メーカーの傘に入り安定した顧客ができれば経営を再建できる考えだ。
一方レンゴー側も同社にとって唯一の空白地帯である「富士地区」には工場をもっておらず、また自社パルプ製造や、クラフト設備も持っていない。 しかし老朽化したマシンと多額の負債に「支援する価値があるか」が鍵となる。レンゴーは15日にスポンサー支援検討について基本合意を発表して以降、具体策をまだ示していない。
設立1950年(昭和25)資本金1億円、塩川好久社
包装用紙向けクラフト紙を主力とした製紙メーカー。パルプ原料のチップから紙製品まで一貫した生産体制を構築し、包装用紙や産業用紙・クレープ紙など幅広く扱っており、1985年3月期には売上高は198億3590万円に達した。
しかし電子機器向けのガラス合紙も国内液晶メーカーの不振など需要が減退、クラフト市場の縮小と競合他社との競争から収益性が下がり、設備が古く植林を持たずチップを外部供給に依存する同社の競争力は弱くなっていた。
2006年みずほ証券系列であるポラリス・プリンシパル・ファイナンス株式会社と株式会社日本エネルギー投資が株式を公開買い付けし、約24億円で東京製紙から全株式を購入。
2009 年 白板紙事業や売電事業から撤退するなど、ファンドによる立て直しが図られたが売上高は130億円前後で推移し伸び悩んだ。2015年4月の全株式(発行済議決権株式の 56.24%)を井出徳建設を筆頭とする地元取引先 9 社及び現経営陣が取得、ポラリス社は事実上撤退した。
その後、18年夏ごろからの米中貿易摩擦によって中国の取引先が生産調整に入ったことに加え、国内取引先も中国向けの取引が減少。中国環境規制の影響により原料パルプ価格の乱高下が発生、価格転嫁が遅れ2020年3月期の年売上高は約121億7700万円にまで減少し、5期連続で赤字となる18億2659万円と業績悪化に歯止めが掛からない状況が続いた。
さらに、新型肺炎の流行などインバウンド需要に支えられていた角底袋など軽包装の売上が減少したほか、鉄鋼向けの需要も減少。加えて、過年度における自家発電設備の増強や機械設備などの積極的な先行投資により年商規模近くの借入金を抱えていたなか、原料の高騰や為替などのデリバティブ損失が発生。
新たに一般向けペーパータオルの販売を開始するも奏功せず、金融機関にリスケなどの支援を要請したほか、新型コロナウイルス感染拡大に伴う制度融資などを活用したが、販売不振から回復できず、自力での再建を断念した形だ。