■ 国内で牛乳パック古紙も余剰
2019年11月
かつて日本の牛乳パックはその良質な品質から海外メーカーから重宝され、輸出価格は国内価格を常に上回り国内で家庭紙原料として使用する製紙メーカーを悩ませていた。海外では牛乳パックにBCTMP(機械パルプ)を使用するケースも多く瓶の普及率が高い事から、洗浄されNBKPを多く含む高品質な日本の牛乳パック古紙は人気があった。
またトイレット紙の需要が増えるのは冬場であるが牛乳パックが多く発生するのは夏場と需給バランスが合わないことも需要期における価格の高騰を招いていた。こういった問題に対応すべく過去数年間で製紙メーカーは牛乳パックよりも安価な難処理古紙や機密古紙を使用し高品質かつ白色度の高いトイレット紙を製造できるよう設備投資を行い、古紙調達コスト削減と不足する原料に対応してきた。
しかしこの数年でアジアに於ける牛乳パック古紙市場は大きく変化している。台湾では環境規制から段ボールとSOP以外の古紙に対し輸入ライセンスが必要となり、また古紙全体の相場が崩れた事により韓国やベトナムでの牛乳パック古紙価格も下落した。
もとより発生量そのものが少なく小ロットでの輸出をせざるを得ないことや1梱包当たりの重量が軽い為コンテナ積載効率が悪く、海上運賃や物流コストが上昇する中でそのコスト増の影響を大きく受けてしまう事も価格下落の要因となった。さらに中国環境規制の影響で廃プラの輸出が滞りゴミ化したことで、国内における焼却炉や産廃処理費が高騰しラミネート等フィルム残渣が多く発生する牛乳パックを今や国内メーカーは敬遠する様になった。
安価な難離解古紙や逆に処理費が貰える機密文書を使用する設備投資を行った家庭紙メーカーにとっては尚のことである。 そういった背景から中国依存度の低かった牛乳パックも他古紙同様余剰し始めているが、特に家庭や学校にて洗浄し切り開き乾かして排出された牛乳パックは日本の古紙回収率向上とリサイクル意識を上げるために学校教育を含め日本が国策として進めてきた古紙の一つである。
誰もが牛乳パックはリサイクルの代名詞でありその牛乳パックが余剰するという事は夢にも思わなかった事だろう。発生量自体が少ない上今のところ価格が安ければまだ流通する事から深刻な問題とまではなっていないが、今後牛乳パックの利用に於いてフィルム残渣の焼却処理ができるRPFボイラーの増設は絶対的に必要であろう。
木質ボイラーと比べRPFボイラーは炉の維持費が高く焼却灰の処理問題も出てくる。隣国韓国では一時RPFボイラーの普及の為国から補助金が出ていた時期があったが、廃プラの処理や古紙リサイクル維持の為に日本でもそういった行政からの後押しが必要のではないだろうか。