■ アメリカ新型肺炎の影響で古紙回収停滞
2020年5月25日
原木資源に恵まれているアメリカであるが、近年の環境保護意識の高まりで、業界は古紙の回収・リサイクル向上に取組んできた。米国森林協会(AF&PA)が最初にリサイクルの目標値を掲げたのは、2009年のことで、「63%」というのがターゲットであった。
これは 1990年時の二倍である。
会員各社の努力の結果、2019年には、66.2%に達し、目標の 63%を超えた。中でも段原紙の古紙利用率は、92.3%にもなっている。このように、古紙のリサイクル率を向上させた結果、古紙がリサイクルされる量は、最終処分場(埋立地)に廃棄される量の二倍にもなっていった。
このように、昨年のアメリカの古紙のリサイクル率が 66.2%に達したことは、上記の通りであるが、実は、この率は、前年(2018年)の 68.1%より下回っていたという。
その理由は、中国向けの輸出量が大幅に減ったために、古紙の回収が進まなかったからである。紙・板紙生産量は 7,400万米トンで、これに対する古紙利用量が 4,900万米トンであったから、リサイクル率は 66.2%ということになる。
今年に入ってからは、コロナ・ウィルス問題で、古紙の回収が順調に進んでいない。理由の一つは、自宅待機を迫られた家庭人が、古紙を所定のところに持ち出さないことにあるそうだ。これらのゴミの多くは、生ごみと一緒に最終処分場に廃棄されているという。
古紙などの廃棄物を回収する労働者は、「エセンシアル・ワーカー」として持てはやされてはいるが、彼らの仕事の量は減っていて、学校や店舗などの事業所も閉鎖されている所が多いから、纏まった量が集まらない。
つまり、古紙は発生量が少なくて、十分に回収できず、その結果、品不足状態になっている。そして、価格が上昇した。
中でも、段古紙が逼迫している。4月には、トン当たり 73ドルであったものが、5月には 107ドルに跳ね上がった。インターナショナル・ペーパー社や、ウェストロック社などの大手段原紙メーカーも、段古紙不足に直面しており、1-3月の決算発表の席で、その事実を報告した。こうした古紙の逼迫状態は、当分の間、続くと見られている。