■ スリランカ、首相が財政破産を表明
2022年7月9日
スリランカのウィクラマシンハ首相は5日、同国の財政が「破産」していると国会で述べた。 スリランカは、外貨準備高が5月末時点で約19億ドル(約2600億円)と底をつき、食料や医薬品、燃料を生活必需品が輸入できず過去70年で最悪の金融危機に陥った。 深刻な外貨不足はインフレを招き、消費者物価指数は6月、前年同月比で54.6%上昇した。 同国は国際通貨基金(IMF)に援助を要請しているが、国土の担保や財政立て直し案の提出が条件となっており、援助の見通しは立っていない。
スリランカのデフォルト要因は、ラジャパクサー一族が政治・経済で権力を握っており、兄弟で大統領と首相を務め財政赤字を放置した事が原因となっている。 また中国政府の掲げる「一路一帯」政策の一貫として中国からの投資によってインフラや港湾開発を行った。スリランカは債務支払いの猶予と延長を申し出たが、中国側はこれを拒否。 中国は港湾の土地や運営権などを担保としており、スリランカ南部ハンバントタ港は実質中国に受け渡され、植民地状態と化していた。
スリランカはインドの東に位置する島国で国土は北海道の8割程度の大きさ。人口は約2100万人で紅茶の生産と観光産業が主な収入源となっている。 1975年にイギリスから独立した後内戦が勃発。 近年海外からの投資や借入によって復興を進めてきたが、多額の債務支払いと、コロナによる観光収入減、ウクライナ戦争による石油価格の高騰や、輸入インフレによって財政が破綻する結果となった。
財政破綻したスリランカの教職員などの公務員は自宅待機を命じられており、インフラも止まっている。ガソリンの入手も困難で給油所で自動車に乗って数日間列に並んでいた60歳の男性が車内で死亡しているのが5日見つかった。ラジャパクサ大統領の辞任を要求する大規模な抗議デモが行われ、デモ隊が最大都市コロンボにある大統領公邸敷地内になだれ込むなどし、警官2人を含む30人が負傷するなど混乱が続いている。
スリランカ産のセロインティーはキリンが発売する午後の紅茶の原料として使用されている。今後スリランカの混乱によってセロインティが入手困難となるリスクも懸念される。