高騰する運送費と運送会社の実情:輸出増と働き方改革により古紙運送を敬遠

  ■ 高騰する運送費と運送会社の実情:輸出増と働き方改革により古紙運送を敬遠

2018年4月25日

海上運賃と国内運送(ドレー及び大型車)の運賃が値上がりしている。運送手配が難しくなっているのは数年前から問題にはなっていたが、直近数ヵ月は特に関東圏にて輸出ドレーが全く取れないという状態になっている。関東古紙輸出組合も価格うんぬんよりも運送手配ができない為に入札を見送る商社もあるようだ。ドレー価格は数割アップ、場合によっては倍という業者もある。大型車輸送も同様だ。

先日運送会社と今後の輸送委託について商談をしたが、どの運送会社も運転手不足と法改正によるコスト増は深刻な様だ。少子高齢化による労働人口の減少に加え、数年前に居眠り運転によるバスの事故による貸切りバス法改正の影響や求人倍率が高い首都圏では特に雇用問題は深刻だ。賃金が安く労働時間も長い運送業は人気もなく、また法改正により労働時間に制限がかかったこともより運送会社の経営を厳しくした。またアベノミクスによる円安効果により運賃のよい製品輸出が盛んになったこと、大手企業による自社輸出入ラウンド輸送も運送会社の古紙離れ要因になっている。

元々古紙は運賃こそ安いがバン詰め時間も短く、運送中の荷崩れ保証もない。日本の景気に関係なく安定的に輸出されていたことや早朝からのバン詰めが好まれることも運送会社にとって副業的なメリットがあった。また労働時間の制限がない昔は一時間でも運転しお金を稼ぎたい労働者が多かった。しかし今はまったく異なる状況となっている。賃金の安い運送業は労働者そのものの質も悪く突然の出勤拒否や辞職、顧客とのトラブルも絶えず、質のよいドライバーを雇用するには賃金の改善が皆無だという。そのためには運賃の値上げ、また限られた労働力と労働時間ではより効率のよい運送に仕事を絞らざるを得ないという現状のようだ。

海上コンテナの輸送ではさらにバースの混雑要因も問題として加わってくる。下請け法の改正で待機料は法的に請求できる権利を得たがCY路上付近での混雑は請求先がない。行政も法的には請求してよいという回答だがどこに請求すればいいのか。折角早朝にバン詰めしてもバースで3~4時間待たされてしまっては次の仕事ができない上にこの待機時間が日に2本、3本と続くとあっという間に採算効率は悪化してしまう。特に古紙は中国、東南アジア向けが主流。東南アジアや中国船社はバースのインフラ整備に投資をしない為CY付近では作業待ちのコンテナドレーによる長い列ができる。

さらに追い打ちをかけるのが日本の港湾労働事情だ。日本人による正規雇用が主流である日本の港湾は労働組合の力も強く運送業同様に過酷、長時間労働といわれる港湾労働のあり方が見直されている。アジア各国の主要港は24時間運営が通常だが、日本の港はそうではない。またITを駆使したCYの自動運用も10年以上前に開発済みだが安全面から採用されていない。こういった事情がドレー会社の東南アジア向け古紙輸送を敬遠する大きな理由となっている。

海上運賃に於いては2016年に韓進海運の倒産をきっかけに船会社による北米・近海航路の海上輸送の見直しが活発になっていた。船会社のコンテナ輸送事業全体に危機感が生まれ、運賃の見直しをしなければならないという意向が強くなった。

現代商船、韓進海運、邦船三社(日本郵船、川崎汽船、商船三井)による北米・近海航路カルテルは韓進海運の倒産により機能しなくなり、元々赤字路線を抱えていた邦船三社は2016年10月コンテナ事業部の合併・統合を発表した。独占禁止法の審査もあり会社設立は2017年7月、実際の運用がこの4月に開始された。

邦船三社の合併により海運業では世界6位、売上規模は2兆円という巨大会社の誕生となったが、マーケットシェアの拡大と経費効率の向上で1,100憶円の効果を見込んでいる。これら邦船三社の合併及び円安による輸出増加の影響で、より海上運賃の安い古紙レートは見直され値上がりしている。船会社の好景気時の値上げは以前から淡泊でメールあるいはFAX一枚送ってくる。

元々新規参入が少なく業者数も多くない海運業界は技術革新による輸送効率の改善や為替・景気動向による絶対貨物数が一番の運賃レート変動要因だが、今後も業界全体として運賃見直しの機運は強い。

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