■ 中国古紙不足による紙のパルプ化と米KLB供給不足 世界供給バランスが近い将来変化?
2021年11月25日
米国内での包装需要が堅調なことや、パルプを含む原材料価格、海上運賃の高騰によりクラフトライナーボード(KLB)のアジア域内需給がひっ迫している。 特に重量梱包用の厚物KLBは米国IP社の独占市場となっており、しばしば供給問題が発生する。
日本では数年前に同様の供給問題が発生した際に、王子グループが名寄工場でのKLB内製化を実現したが、殆どの重量梱包メーカーが未だ輸入に頼っているのが実情だ。
国内はあまり市場規模が大きくない上に、400g以上という厚さと北米の針葉樹を使用した高強度なKLBを生産できるメーカーが少ないという事が代替え素材の調達を難しくしている様だ。 しかし今年初夏頃から米国からの供給が鈍化し、米国一本の原料調達に危機感を覚えたコンバーターは、本格的に第二の供給元を模索していた。
輸入通関統計によると未晒しクラフトライナー(300g以上、HScode:4804.11-020)が今年4月に初めて中国から20㌧程度輸入された後、9月には650㌧輸入された。昨年まで中国から厚物ライナーが輸入された事はなかった。
中国からの段原紙輸入は日本から中国へ運ぶ海上運賃の5倍以上かかる上に、日本の港湾コストも割高で全く価格が合わない。 現在中国では古紙が輸入禁止となった事で、パルプをベースとした高強度ライナーが生産される様になった。 米国KLBの供給不安が発生している中で、 背に腹は代えられず中国からの原紙調達に踏み切った段ボール会社があった様だ。
中国では目下電力制限や原燃料コストの上昇により原紙価格が上昇している事に加え、米国品より価格変動が激しい中国品が今後も安定的に日本へ輸入されるかはわからない。しかし米国からの供給一本だったKLBが、これほど纏まった量で他国から輸入された意味は大きいように思う。
世界一の段ボール原紙生産国になった中国に於いても、バージンパルプベースのKLBやクラフト紙は輸入に頼っており、米国からのKLBの供給が難しくなった事は大きな問題となった。 KLB価格は前年度対比50~70%以上値上がりし、さらに値上げを呑んでも供給量にも制限が付いている。中国は米国から年間29万㌧のKLBを輸入しているが、2020年の輸入量は前年度比49.6%にまで減少した。