世界の古紙マーケット状況:中国環境規制で欧米の古紙問屋が数社廃業

  ■ 世界の古紙マーケット状況:中国環境規制で欧米の古紙問屋が数社廃業

2017年8月20日

本年度初旬からの中国の雑誌古紙の輸入規制の影響により、アメリカでは大手産廃業者が3社ほど倒産した。

 イギリスは中国へ古紙輸入再開を希望

イギリスではイギリス政府に対し古紙の輸入再開に関する嘆願書を中国政府に出してほしいとの要望が古紙業界から提出された。

しかし「廃棄物の輸入を止めたいという中国にさらに汚い古紙を買えというのはモラル的にどうなのか」とういう世論もあり政府は対応しない方針の様だ。アメリカの回収業者では一部設備投資をし、シングルストリームからさらに選別する工程を設ける動きをしている企業もあるそうだ。世界中の再生資源市場において中国の環境規制は大きな影響がでている。

 多くの製紙企業で環境設備に不備が見つかる

中国の輸入制限は日本の古紙を対象外としていたが、本来輸入通関上HSコードで分岐しているものを日本だけ例外にするのは外交上どうなのかという物議が中国税関からでている。

また6月の中国古紙輸入ライセンス更新申請(中国の輸入古紙ライセンスは半年ごと輸入量の枠を取得する仕組み)の環境審査にて殆どの製紙メーカー及び紙器業者で違反が指摘された。中小メーカーで違反の酷い企業はライセンスを取り上げられてしまった業者もでており、小規模紙器業者では廃業も命じられている所もあるようだ。

一部輸入のライセンス数量が残っている製紙メーカー(玖龍紙業等)は輸入を継続しているが、殆どの製紙企業が輸入古紙の購入を止めている状態だ。過去にも数度中小企業に対する環境問題を理由とした締め付け及びライセンスのはく奪は行われてきたが、今回政府と強いパイプをもつ玖龍紙業や大手外資系製紙にも本格的な規制が入ったことにより中国政府の本気度がわかる。

各先進国もかつて環境問題から大手企業を廃業させ、(日本でも水俣病や四日市ぜんそく等で違反企業の一部を廃業させチッソ等の保証会社を設立した経緯もある)今や先進国で廃棄物を輸入しリサイクルをしている国はない。

 環境規制は継続、今後は本格化

一方中国政府として、中国国内の環境回復及び法令尊守、また古紙自国回収を増やすこと、さらに各国に対し古紙やその他リサイクル廃棄物のきちんとした分別を促すことを目的として今後もこの動きを続けると思われる。

また昨年の「独身の日」のEC商品の好景気に起因した古紙価格の高騰は中国国内の内需が高まったことを示しており、それに伴う原料価格の安定化と古紙の自国回収は大きな課題になっていることは明らかである。

今回裕流ライセンスの付与に大きな足かせとなったのはあくまで製紙メーカー側の環境基準違反によるライセンス更新の遅れが原因だ。違反していない企業や違反を是正し環境設備に投資できる大手企業に対しては、十分に分別された日本の古紙に規制をかける理由は薄いといえる。

雑誌古紙に関しては上記で述べた通り例外なく規制対象となるが、段ボール古紙はライセンスが9月中旬頃には更新され、順次輸入が再開されるのではないかと業界関係者間では噂されている。

 今後の価格動向

今後の古紙価格はこのライセンスが更新されるかどうかに大きく掛かっているが、現在中国の国内古紙は高騰しており輸入が解禁されると一気に世界の古紙価格も高騰する恐れがある。現在日本国内も古紙需要は好調で、輸出減による余剰感は感じない。しかし輸入禁止措置が続けば余剰感が表に出はじめ更なる価格の下落を招くと思われる。

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