■ ロシア2022年丸太輸出禁止 中国の木材調達に大きな影響
2021年8月15日
プーチン大統領の命令によりロシアは2022年1月1日から針葉樹及び高付加価値広葉樹の丸太及の輸出を禁止する。 今年7月1日からは10%もの輸出関税が課されることとなった。
ロシア議会からは最終的な法案が発表されておらず、段階的に禁止される、或いは国有企業の輸出が許可されるかなどは不明なままとなっているが、最終的には輸出関税を22%まで増税する事が検討されており、実質的に未加工丸太の輸出は困難になるだろう。
ロシア連邦税関局によると、2010年から2020年まで世界の丸太輸出量の10~12%をロシアが占めており、20年の丸太輸出量は針葉樹・広葉樹合わせて1,550万㎥と国内で伐採された木材総量の7.2%が輸出された。
ロシアから丸太輸出が禁止となった場合、極東地域に於いて約2000社、35000人の雇用に影響がでる見込みだ。またロシアの製材加工業界は80~90%の稼働率となっており、輸出規制によって還流した丸太を製材する余力はロシア国内にはないと言われている。特に国内供給が過剰気味と言われているカレリアやサンクトペテルブルグエリアでは、政府あるいは外資系からの投資が無ければかなり厳しい環境を強いられる事になるのではないかと危惧されている。
プーチン大統領が丸太の輸出を禁止する背景には、違法な伐採により継続可能な輸出が行われていない事やロシア国内での木材加工産業を発達させたい意向が背景にある。
ロシアからの針葉樹丸太輸出量は、最も輸出量が多かった2006年に3,700万㎥を輸出して以来15年間減少傾向にあり、2008年に輸出関税が実施された事をきっかけに劇的に減少し、2019年には850万㎥にまで縮小した。 広葉樹の輸出量は過去5年間700万~800万㎥の間で推移しているが、オークやアッシュなど高付加価値の高い丸太が輸出禁止されれば、今後2年間で大きく減少する可能性が高い。
針葉樹丸太輸出量のうち70%(650万㎥)は中国向けに輸出されており、極東地域伐採総量の20~30%を占めている。 中国にとっても輸入量の約10%(ニュージーランドは10.9%)がロシアからの輸入となっており、広葉樹は一番、針葉樹では3第三位の木材供給元でもある。 ロシア北西部の木材は主にフィンランド向けとなっており、輸出量の10%を占める。フィンランド向けの丸太輸出は主にパルプ用途だが、白樺など規制対象外の広葉樹が多く規制後も大きな影響はでないと思われる。
中国は過去5年間、ロシアから針葉樹と広葉樹丸太合わせて毎年約1,000万~1,200万㎥を調達しており、ロシアの丸太輸出禁止は中国の木材調達に大きな影響を与えることが予想される。 中国は2008年以降、針葉樹の輸入をロシアから欧州(ドイツ)やオーストラリア、北米に切り替える動きを見せており、2018年に130万㎥だった欧州からの輸入量は20年に1230万㎥に増加した。
しかし、中国は欧州からの木材輸入を長期的に継続しないとの予測もある。 短期的にはロシアの木材伐採量は減少し、中国はオセアニア、欧州、米国からの丸太輸入量を増加させると期待されているが、長期的には中国が丸太の輸入から製材輸入に移行する可能性が高い。ロシア政府はこの成長市場への輸出競争力を得るため、木材加工産業への投資を促進するとみられている。