■ ロシア 経済成長により紙需要増で原紙不足 リサイクルに課題と古紙不足
2021年6月1日
EUは廃棄物の平均40%を再生利用、20%をサーマルリサイクルなどのエネルギーとして活用している。特にフランスは43%、ドイツは68%の再生利用を達成している。一方ロシアでは市中回収ゴミの7%程度しか再利用されておらず、93%が選別もされず埋め立てゴミにまわされている。
ロシアのゴミの15%を排出するモスクワ周辺の埋立地では硫黄臭などの腐敗臭や廃水などの汚染問題が発生し、住民への健康被害が訴えられた。 プーチン大統領は対策として2017年夏にモスクワ地域最大の埋め立て地の一つであるクチノ埋立地を閉鎖し、都市部から離れた地域へゴミを運ぶように指示を出したが、廃棄物が持ち込まれる地元住民のデモなどが相次いだ。
この問題が一般市民の大きな不満になったことを受けて、2018年12 月、新たにゴミ分別センターを200カ所開設し、リサイクル率を2024年までに60%引き上げる目標を発表した。しかし、行政主導で行われるリサイクルシステムの構築は過去ことごとく失敗し住民は不満を募らせている。
ロシアはごみの回収インフラを整備するために1970年代に大規模なリサイクルプログラムを開始した。 各地にリサイクルセンターが建設され、市民がガラス瓶など分別して持ち込む制度を確立、1980年代には紙ごみは30%がリサイクルされるほどになった。
しかし1990年に旧ソ連が崩壊した事によって、リサイクルを含む社会プログラムのほとんどが崩壊した。 補助金と公的支援が撤回された為、スクラップメタル、古紙、繊維、ガラスを集めるロシアの制度は事実上廃止される事となった。 現在ロシアに資源物を分別する習慣はなく、全て埋立てゴミとして処理されている。
2000年から2015年の間に、ロシアの埋立てゴミは1億5,120万立方メートルから2億8,230万立方メートルに急増した。 現在の埋め立てスペースはすでに65-70%満杯となっており、2025年までに廃棄物の処理能力を倍増させる必要があるとの調査報告もある。さらに既存の埋め立て施設も環境対策が不十分で、廃水が地下に浸透するなど汚染問題も多い。土壌汚染やメタンガスの発生による火災も発生しており、さらに処分賃の高騰が原因で年間17500㌧もの不法投棄も社会問題となっている。
昨今ロシアの市場開放により、経済は成長し消費も順調に増加しつつあり、それに伴い包装資材の需要も増加している。 ロシアは木材資源が豊富な国だが、木材やパルプは輸出され、紙製品は不足し国外からも多くの輸入紙を購入している。昨今の段原紙需要の拡大を見込み製紙ラインへの投資計画も多数あるが、原料である古紙が不足している実情もある様だ。