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各国の製紙が再生パルプビジネスに参入

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  ■ 各国の製紙が再生パルプビジネスに参入

2018年7月30日

安価な米国MIX古紙を使い抄きっぱなしの中芯を製造し再生パルプとして中国向けに輸出されている。

インドネシア、マレーシア、台湾、韓国にてそういった再生パルプの生産が始まっている様子だ。再生パルプメーカーと異なりドライ設備をもった板紙メーカーは製造コストも安く、中国の規制により雑誌古紙が安価に入手できる。特に米国品は40%ほど段ボールが混入するため繊維も取れ、またPETボトル等のプラゴミも混入はするが現地の安い労働力を使いて選別を行うことができ、その分別した廃プラは資源として転売できるそうだ。一般的に再生パルプメーカーのミルコストは320-380ドルと言われ、ドライ設備を導入しているメーカーは少ない。

平版での納品ではあるがWETパルプは長期保存に向かず、また運送効率が悪い。一方板紙メーカーのミルコストは150~200ドル前後、中芯と異なり最低限の紙力材の添加とサイズも必要ない。製品として使用するわけではない為、コンテナ幅まで最大限ワインドしたマシン幅の巻取をコンテナに押し込み出荷することができ、原紙販売で価格や品質で大手と競合するよりもこの再生ビジネスに参入する方がコストパフォーマンスが良いと判断するメーカーが後を絶たないようだ。

また購入側も特にライセンスの交付を受けられない中小メーカーはローカールの$500ドル近い高額な古紙を取り合わなければならず、製品販売価格も大手よりも安価だ。

 古紙不足に高いニーズ

巻き取りの荷姿とは言え歩留まりも考えるとこの再生パルプビジネスは市場のニーズにマッチしたものだと言える。米国のMIXを使用して製造したAMIXグレードの再生パルプはマレーシア品が$350-400ドル、AOCC#10を使用したインドネシア品が$400ドル前後、韓国MIXを使用した韓国品は$350ドル程で取引されているという。また、油のついた金属合紙を再生した再生パルプは未晒し品で$600ドルほどの価格で売れているとのことだ。特にUKPが高騰している昨今、油を除去すればバージンパルプでできている金属合紙は需要が高い。

 インド製紙企業も参戦

インドの大手製紙会社も米国のOCC#11を使用し再生パルプを生産、中国向けに輸出を始めた。中国税関には板紙として申告し税関検査も何の問題なくクリアしているという。

MIXではなくOCCを使用して製造していることがユーザーのニーズを掴みまた、インドから直行便で20日程度の納期となっており香港にて陸揚げされているという。価格はCIF HONGKONG $400ドル弱。サイズもスターチも添加せずインドのブローカーはこの再生パルプを抄き溶かしたOCC#11と呼んでいる。

こういった古紙パルプ中には本当に古紙をただ濡らしただけの粗悪な再生パルプもあり、使用後に多くの汚泥や廃棄物を出してしまい中国政府は環境保護の概念に沿わないとして再生パルプにも規制を設ける動きが出てきている。

 再生パルプにも規制の動き

現状は再生パルプメーカーに輸入書類に規格書と原料のHSCODEを明示するように通知があったのみとなっているが、古紙再生パルプの増加を受け検疫局により、再生パルプの定義、また荷姿等の基準が検討されている。現在検討されている再生古紙パルプの荷姿は「1包装が220kg以下の平版梱包になっており、平らなパルプ袋(150~200g/㎡)によって二重に包装し番線によって「井戸」の形に結合しなければならない」「各パルプ袋の表面には製品名、商標権、シリアル番号、乾燥重量、グレード、検査員名、製造年月日、製造業者名等が明記されなければならない」となっているが未だ公式には施行されていない。

廃プラはすでに中国では昨年より輸入が禁止されており、各国においてレジンに再生し半製品を輸出するビジネスが確立しつつあるが、レジンの色や包装荷姿まで指定される等規制が入っている。この規制が半製品の販売に少なからず障壁となっている様だ。半製品の輸入に悪質な業者が逃げ込み、粗悪な原料が脱法のような手段で輸入される事を防ごうという動きはこの再生パルプビジネスにも近い将来適用されると思われる。

 玖龍社のカタリスト買収

再生パルプの輸入が増加しその規制が検討される中、6月25日に玖龍紙業が米製紙会社のカタリスト・ペーパー・オペレーションズを1億7500万米ドル(約190億円)で買収すると発表した。カタリストは、メーン州ラムフォードとウィスコンシン州バイロンに工場がありラムフォード工場の生産能力はコート紙類など年間約55万トンで、クラフト紙用パルプも生産する。

同社のパルプは自社社内向けではあるがパルプ価格の高騰や古紙の安定調達に不安がある中、カタリスト社の買収は玖龍紙業の経営基盤を強固なものにするとして株主に評価され株価は上昇している。

 環境規制によって変化する市場

中国政府2020年古紙輸入禁止計画の発表により2020年以降中国国内の原料価格の高騰と世界各国の古紙価格の下落が予想される。日本品の古紙価格が反して高騰していることから短期的には輸入可能な高品質古紙に付加価値がついていくものと思われるが、中国国内での古紙回収率の向上と、他産業と同様に長期的には製紙産業の南方シフト化は起こる可能性が高い。

しかし製紙会社の移転には莫大なコストがかかる為、中期的に再生パルプ工場の建設や中国系製紙メーカーのパルプ企業買収等迂回ルート、第三国による半製品化を含めた産業形態の変化は加速するのではないだろうか。

 東南アジアでの環境問題も誘発

余談だが先日タイにて廃プラスチック及び電子廃棄物の輸入規制が発表された。ベトナムの港が廃プラの輸入増でパンクしたことが記憶に新しいが、中国の輸入規制によりベトナム、タイ等の東南アジアに廃棄物が流れ環境問題を引き起こしている。

古紙は今のところ規制の対象にはなっていないが、今後粗悪な古紙が流れ続ければ将来的に東南アジアでの古紙輸入規制につながらないか個人的には危惧している。もしそうなってしまえば本当に世界の古紙は行き場を失ってしまう。

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