■ 古紙輸出市況:インド都市封鎖再開と中国原紙価格軟化 アジア価格に影響
2021年5月1日
3月下旬に最高値CY 22円前後まで上昇した輸出古紙価格は一転、膠着状況からやや弱含みの状況となっている。
3月中旬以降中国の原紙在庫過多による価格軟化を皮切りに、アジアの古紙価格上昇も影響を受けた。 またインドに於いて新型肺炎の感染が爆発的に再拡大し、4月19日首都デリーにおいて一週間の都市封鎖が発表された。感染者数は累計1,410万人に達し、世界で最多の米国(3,140万人)に次いで2番目に多い。
スエズ運河の座礁事故によってEOCCの供給に影響がでる懸念があったが、インドの都市封鎖再開後欧米古紙は20~40㌦ほど大きく軟化している。
一方東南アジアでは通販需要を含め内需が強く、引き続き原料需給はタイトな状況だ。またアジアに進出した中華系製紙企業の段原紙及び再生パルプ工場がAOCCの買い付けを力強く継続している為、大きな下落には至っていない。
価格の下落幅は国によって異なり、大幅な下落となったインドだが、東南アジアでは10㌦~程度の小幅な軟化に留まっている。 しかし中国向け原紙輸出が鈍化した事により、原紙価格の上昇にブレーキがかかり、高すぎる古紙価格に待ったがかかった状態であることは確かだ。
アジアのローカル中芯価格は490~520㌦付近まで上昇しているものの、アジア国間で販売される輸入中芯価格はCIF 450-470㌦前後で高騰した運賃コストは添加できていない。 メーカー資材部は輸出している2~3割の原紙コストバランスと古紙原料不足に頭を抱えている。
一方中国では大量の輸入紙を買いだめしたコンバーターと、旧正前に原紙在庫を貯めた製紙両者に原紙在庫が多く、大手製紙は各社休転在庫調整をしている。本来不需要期である4月故に、原紙の消費状況は悪くさらなる原紙値上げは受け入れられない状況だ。高騰したパルプ価格も天井感がでており、先物市場や一部国内NBKP価格も軟化している。 4月中旬以降の中国国内原紙価格が気になっていたが、玖龍社は4月22日段原紙を100-150RMB(15-20㌦)値下げすると発表した。 現在のJOCC相場はCIF TAIWAN $245-250(CY20.5-21.0円/kg) CIF VIETNAM $265-275(CY21.0-21.5円/kg)CIF INDNESIA $280-295(CY 21.5-22.0円/kg)で徐々に軟化傾向にある。東南アジアでは原料不足から大暴落につながっていないが、価格が再上昇する要因は少ない様に思う。
海上運賃とコンテナバランス状況もまだしばらく解消しそうにはなさそうだ。北米ではワクチン接種が進んだことで港湾作業も回復しつつあるが、通販需要の増加やバイデン政権の現金給付が消費に回り輸入品が増えた事で状況は改善していない。
また中国の古紙輸入禁止によって、古紙や廃棄物原料の流れが東南アジア・インドに切り替わり中長期的にコンテナのアンバランスが発生する可能性が高い。特に輸出の少ないインドで古紙需要が増加している事は、新たなコンテナ滞留問題を引き起こす懸念へとつながっている。空コンテナ回送のコストは既存の物流ルートへ上乗せされる事となるため、肺炎終息後も古紙レートは元の価格帯まで戻らないのではないだろうか。