■ 古紙輸出市況 中国景気減退 アジア古紙価格軟化も円安により円価維持
2022年4月1日
ロシアによるウクライナ侵攻、中国の景気失速や都市封鎖など景気減退を伴う不安要素が多く、東南アジア製紙企業の古紙オファー価格は軟化し始めている。 EUの廃棄物輸出に関わる法令改訂の際に、インド側の事務的ミスがあった事で止まっていたインド向け古紙輸出も4月に再開される見通しだ。 古紙不足から飛びぬけた高値で米国古紙を購入し、アジアの古紙価格をけん引していたインドも購買を控える動きを見せている。 中国からの再生パルプや段原紙の引き合いが弱まり、原燃料や古紙価格の高騰を国内原紙販売価格に十分に転嫁できず倒産した製紙企業も数社ほど出たとの報道もあった。 インドのビジネススタイルは、必要な時は高値を付ける反面、突然購買を止めてしまう傾向にある。 また年間700万㌧以上の古紙を消費するインドが止まれば、市場へのインパクトは大きい。事実、昨年インドで感染爆発が発生し大規模な都市封鎖を実施した時はアジア全体で古紙価格が下落した。 欧米古紙サプライヤーはインドに依存し過ぎる危機感から、リスクヘッジの為東南アジアへの販売を増やし始めている様だ。 東南アジアへの欧米古紙流入と中国向け再生パルプや段原紙需要の減退は、東南アジアメーカーの古紙購買価格も軟化させ、EOCC及びAOCCの相場は2週間前と比べ全体的に10㌦~20㌦ほど下落している。
今のところベトナム、台湾向けが殆どを占める日本段古紙の値崩れは欧米ほど大きくなく5㌦~10㌦前後の軟化に留まっている。 さらに米国FRBの利上げにより日米金利格差が開いた事や、日銀が円安を容認する姿勢を見せた事で円は一時122円を超える水準にまで上昇した。為替が大幅に円安に振れた事による円貨価格の押し上げ効果は㌔あたり1円から最大2円程に及ぶとみられる。 JOCC相場は台湾向けがCIF $265から$255、ベトナム向けは$285~$290前後と軟化傾向にあるが、円貨ベースの輸出価格は先月のCY26.5-27.5円の価格帯から若干上昇した。 しかし現状から鑑みて、この円安効果を上回る売価の値崩れが起きる可能性もあるため、今後の動向を注意深く見る必要があると思われる。
東南アジアの製紙企業(段原紙)は原燃料価格の急激な高騰と、海上運賃の高止まりが製紙の収益に大きく影響を与えている一方、中国の原紙購買意欲が弱い事で高騰したコストを価格に転嫁する事ができていない。 中国ではオリンピック閉幕後、新型肺炎新規感染者数が大幅に増加。 吉林省や深圳市、東莞市など5つの都市に於いて都市封鎖が実施され、トヨタを始めとする自動車産業や「iPhone」の製造を手がける台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業など多くの製造業が操業停止を余儀なくされた。 中国向け段原紙輸出価格はジリジリと下がりつつあり購買意欲も弱い。新規オファーを出してもお断りの様なカウンターが返ってくる状態だ。 台湾はこういった中国の景気減退と段原紙需要の弱まりによって最も大きな影響を受けている国だ。台湾は段原紙生産量の約3割強を輸出しており、中国向け輸出依存度も高い。 元来旧正月明けの3~5月は不需要期だが、今年は特に中国からの引き合いが殆どないという。 輸出不調に加え、長雨の影響で農作物も不作となり4月の原紙抄造は未だ埋まっていない。 台湾の大手製紙企業は減産を余儀なくされている上、栄成紙業は原紙在庫置き場を確保する為国内向け段原紙販売価格を軟化させた。 古紙在庫も非常に重く、先月からサプライヤーに対し4月分の古紙船積量を制限する様アナウンスする事で在庫調整に入っている。
台湾のOCC輸入量は昨年の8月の17万㌧をピークに減少、22年1月は10.7万㌧と前年比3割程度少なかった。 輸入元別でみると昨年の1月はAOCCが全体の64%を占めたが、今年はJOCCが6割弱と前年度比1.6倍となり購買比率が変わっている。 日本側の輸出通関統計を見ても、昨年1月の台湾向け段古紙輸出量は全体の27%であったが今年は52%まで増加、ベトナム向けは2.8万㌧と前年同月比53%減で輸出量全体に占める比率も49%から33%に減少した。 台湾向け輸出価格はベトナム向けに比べ古紙問屋店頭㌔当たり0.5円から1円程度安い状況が続いたが、比較的フレートが安定しBookingが取りやすかった事が輸出量増加の要因となった。