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古紙輸出市況 中国原紙需要減を背景に軟化を続ける輸出価格 

古紙輸出市況 中国原紙需要減を背景に軟化を続ける輸出価格 

古紙市場状況

  ■ 古紙輸出市況 中国原紙需要減を背景に軟化を続ける輸出価格 

2022年8月29日

輸出古紙価格の軟化が続いている。280㌦前後だった東南アジア向け価格もこの2ヶ月で200㌦を割り込む水準にまで軟化している。東南アジア製紙企業が古紙を買わない理由は、やはり中国の原紙需要が非常に弱い事が大きい。昨年より中国は景気減退と生産過剰によって輸入量を減らし始めていたが、都市封鎖が長期化した事や、不動産価格の下落など様々な要因が重なり状況が悪化した。 

一方東南アジアはこの数年間で米中貿易戦争や中国の都市封鎖に起因する脱中国の恩恵を受け内需は悪くない。各国のローカル中芯価格は$480-500と高止まりしており、「異常に安いのは輸出価格だけ」という状態だ。アジアの段原紙輸出価格はCIF $380~410まで軟化しており、弱含む輸出市況にわざわざ古紙を輸入してまで輸出する必要はなく、各社国内価格維持のため減産休転の方針を取っている。 

それとは対照的に、日本の段古紙の3割以上を輸出している台湾の状況は芳しくない。 米ペロシ下院議長訪台に対する報復措置として、中国が台湾製柑橘類と魚介類及びその加工品の輸入を禁止した事で段原紙の輸出だけでなく、成果物向けの包装需要にも影響がでている。またインフレや中国経済の減速を受け、スマートフォンやパソコン向けの需要が落ち込んできている事も足かせだ。現在の古紙輸出相場はCIF VIETNAM $180~190 (CY16~17円/kg)、台湾向けは月初の$170~180を最後に値が付いていない。 

今年1~6月の中国段原紙輸入量は258万㌧、前年同期比で2割減少している。このまま輸入量の低迷が続いた場合、最も輸入量の多かった20年から通年で200万㌧近く減少する事となる。需要の弱まっている中国国内では大手製紙企業が相次いで大型休転を発表、7月末から実施されている休転は数度延長され、減産総量は50万㌧以上となる見込みだ。 

一ヶ月を超える大型休転に中国国内古紙価格は大きく軟化。6月末時点のA級(スーパーからの準産業古紙)古紙価格は2,350~2,500RMB(345-362㌦)だったが、7月末時点で2,000RMBを割り込む地域も出ている。 製紙企業の購買価格は一ヶ月でおおよそ350~500RMB(50-70㌦)下落した事となる。 休転前になんとか在庫を処分しようと投げ売りが発生し、古紙問屋が大きな損失を被ったとCCTVで取り上げられるほどの騒動に発展している。国家統計局のデータによると、7月29日時点で、中国全土に於いて130社以上の製紙企業が紙価格を引き下げた。 8月10日前後に中小企業主体で小規模な値上げも発表されたが、中国国内の原紙在庫は3年ぶりの高水準に達しており、市場には受け入れられなかった様だ。

 今後のアジア市況 古紙の底値は?

 下落を続ける古紙相場に、底値はどこになるのか?という議論によくなる。現在の中国向け原紙価格から、工場の生産コスト170~200㌦と海上運賃や輸出諸掛り(30~40㌦)を差し引くと、台湾向けのCIF $170~180は採算ぎりぎりの価格帯となる。 需給バランスからもう少し値崩れする可能性はあるものの、東南アジア製紙メーカーは価格が下がるたびに古い契約をキャンセルしており、古紙購入量は想定よりも少ないはずだ。古紙に掛かる海上運賃と欧米サプライヤーの採算性から鑑みても150~160㌦付近が底値ではないかと個人的には感じている。

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