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新型肺炎によって大打撃の印刷業界

新型肺炎によって大打撃の印刷業界

  ■ 新型肺炎によって大打撃の印刷業界

2020年4月

イベントの自粛や娯楽施設の閉鎖によりチラシや広告の発行部数が減った事は印刷業界にとって大きなダメージを与えることとなった。またオリンピックの延期によりパンフレットやチラシ印刷のキャンセルもでている。肺炎流行の影響を受けづらい業界も派手な広告などを自粛している為、受注量が前年度対比9割減という印刷会社もあるという。 

そういった受注減が一時的なものであればいいが、チラシを減らしても売り上げが減らなかった業界もある。 スーパーや小売店は巣ごもり需要で活況、接触機会の少ない通販での買い物が伸びているという。 将来的にそういった顧客が今後紙媒体でのチラシ自体を止めてしまう可能性に頭を抱えている。 

中国ではチラシや印刷用紙の需要が悪くAPPを始め主要用紙メーカーは長期休転を実施した。休転期間は3月末から4月中旬にかけて行い、今後も数か月の生産調整、契約分生産の繰り越しを行う。

チラシや広告の発行部数が激減していることは印刷・製紙業界だけでなく新聞、印刷業界にも影響を及ぼしている。 オーストラリアでは広告収入大幅減により60もの地方紙が紙媒体での発行を停止することを発表している。紙での発刊を停止しWEB媒体での配信に切り替えるという。 また日本でもスポーツ新聞が危機的状況にあるという。広告が減ったことも理由ではあるが、野球や相撲、甲子園の中止などにより掲載する試合数も減っている上に対面取材ができない事により掲載する記事が無くなってきているのだという。

また週刊誌などの雑誌への影響も大きい。4月8日に「社員への感染の疑いがある」として集英社が少年ジャンプの発売延期を発表した。その他週刊誌に於いても、芸能関係は自粛を始めており掲載する記事が少なくなってきたことにより内容が薄くなり売れ行きが悪化する懸念が出てきている。合併号など発行点数を減らす決定をしたものもあるという。また全国では250店舗以上の書店がすでに休業しており、商業施設にある販売コーナーも施設自体の閉館により営業できないケースがでている。

 コロナ渦でデジタル化が加速する社会

新型肺炎の流行により都内の企業では5月上旬まで在宅業務が中心となる。しかし、在宅勤務の64.2%が紙の書類の確認や押印でやむなく出社しいていることが分かった。 特に対面商談がなく比較的在宅勤務が馴染み易い財務関連従事者の4割が書類の確認や書類のやり取りに必要な機器が自宅にないなどの理由で出社を余技なくされている。 

ペーパーレス化への対応が今後在宅勤務を実施する上で課題となっており、業務のデジタル化の遅れを補いつつ緊急事態宣言に臨まなければならない。一方で完全な在宅が実施できているIT企業などの情報産業に於いては36%が完全なデジタル化を実施できているという。 

学校に於いても4月以降も休校を決定した小中学校は少なくない。そういった学校に於いては遅れる授業に対応するためタブレット端末を利用したオンライン授業が開始される。 SARSが流行した時には不可能だったことが現在の技術でカバーできることが多い。 必要に迫られた状況下においてさらにペーパーレス、IT化が進むだろう。今回デジタル化への対応有無が企業の事業継続に必要不可欠であることが露わとなった。危機管理のあり方が見直され、今後社会全体の紙離れを後押しする事になるだろう。

 紙パ業界には恩恵はないのか

一方で紙業界にとって今回の新型肺炎流行は悪いニュースばかりではない。接触感染が警戒される中で、紙媒体に於けるウィルス生存率が低いことがドイツの研究所によって発表された。コロナウィルスはプラスチックや金属の表面上で2~3日生存するが、段ボール上では24時間しか生存できない事がわかった。湿度や環境によってはより長く生存できる可能性があるとの事だが、未だ食品関連包装には安価なプラ素材が多く利用されている。 

廃プラによる海洋汚染が影響で脱プラが叫ばれ、紙製包装材や紙ストローに脚光が集まっている昨今、抗ウィルスの観点からの紙製品の利用促進にも期待したい。

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