■ 欧米で段ボールの大増産計画。 近い将来また古紙需給は再度ひっ迫する?
2019年9月30日
上記古紙市況にも記載した通り、一度リバウンドした古紙アシア相場もインドネシアの船積前検査問題をきっかけに再度CIF 100㌦前後まで下落している。
古紙の行き場が限られる為に日本の古紙と欧米の古紙はその価格を競う形となり、当社ベトナム工場にも欧州からの売りオファーは依然強い状況だ。
マーケット全体の予想としては古紙価格低迷は中長期的に続き、中国製紙工場の東南アジア移転が進むまでは余剰感が継続するのではないかとの意見が一般的だ。
しかし今年から来年にかけて欧州で再生段ボールー原紙の工場が順次立ち上がりEOCCの輸出量は近い将来大幅に減少するのではないかとの情報が入った。
事実関係を確認したところ、2022年までに欧州では504万t、北米では192万tの段ボール原紙の増産がある事が確認できた。(資料:欧米段ボール原紙増産計画参照) また既設新聞マシンの転抄など改造案件が多い為、基礎工事から必要な東南アジア新設工場とは異なり今年下半期から22年頃までに各マシン稼働を開始する。
日本でも80万tほどの転抄や増産が計画されているが、欧米ではそれ以上の増産が計画されており、古紙の需給に大きく影響しそうだ。
これだけ多くの増産が計画されている背景には欧米諸国でも通信販売ビジネスが堅調で、特に欧州ではDUTY FREEかつボーダレスな越境ビジネスが活況なのだという。 米国では通信販売向けの段ボール市場規模は毎年15%ずつ成長しており、一貫メーカーである最大手IP(International Paper)社が一番のシェアを持っている。
2019年上半期の運送事業の経済成長は1.7%と言われアマゾンがドローンを使った配送を検討するなどしている。米国段ボール協会によると2019年の米国の段ボール通信販売需要は全体の10%を占め390憶㎡/年となる見込みだ。
欧州500万t、米国190万t、日本80万t、東南アジアで1,500~2,000万tの増産されたマシンが稼働を開始すれば2,300万~2,800万t程の古紙需要が生まれる事となる。 これは2016年の中国古紙輸入量に相当する。 また500万tの段原紙増産に対し欧州からの2018年インド・東南アジア向けOCC輸出は320万t程度となっており、仮に中国向け333万tが無くなったとしても、今後1500万t以上の増産が見込まれる東南アジアでは近い将来古紙需給がタイトになる可能性が非常に高い。
現在低迷している輸出古紙価格も早ければ欧州の増産マシンが稼働し始める2020年秋~2022年にかけて回復してくるのではないだろうか。
2021年に中国という巨大市場を失う古紙ビジネスにとっては朗報だ。
しかし古紙の需要が回復した後の価格帯は、20円前後の相場に落ち着くのではないかと予想している。昨年の中国バブルの全盛期でも東南アジアメーカーは230-240㌦以上の価格を付けておらず、中国に代わる古紙の需要国になっても中国の様なバブル状況にならないのではないだろうか。
この背景には、爆買いする中国人とは異なり安定を好む東南アジア人の民度とアセアン内の原紙価格も中国程の高値にはならず、仮に中国向けに輸出しても輸送コストや関税分は手取りが減ってしまう事が原因だ。
一方でこれほどまでの大型増産に対し先進国の人口は減少傾向にあり、増産した原紙の需要が十分に満たされるとは考えにくい。
いずれは輸出向けとして域外他国や中国へ供給される事となるだろう。 中長期的に見た場合、世界的に原料高の製品安に陥る可能性が出てきたことも否定できない。