■ アジア各国の稼働は徐々に回復 中国国慶節明けの需要に期待感
2021年10月3日
今年の第3四半期はアジア各国の都市封鎖や中国の景気失速感により、工場稼働及び需要が縮小した。一方で国際古紙価格は高止まりし、各製紙企業は原料高騰と高い海上運賃によって苦戦した四半期だった。
ベトナムの都市封鎖は9月30日に解除され、段階的に規制を緩和していく事が発表された。商業施設や宿泊施設は営業が許可されるが、レストランでの飲食は引き続き禁止され、デリバリーは本格的に再開する。 外出は可能だが、一般市民の市外への移動は原則禁止となり市内を移動する場合はワクチンを2回接種済みか、1回の接種から14日間が経過していることが条件になる。
製造業に於いて従業員が敷地内などで寝泊まりして働く「工場隔離」は厳格運用が緩和される。企業側が感染防止対策を徹底することで、労働者は自宅などからの通勤が可能になる。
マレーシアに於いても、都市封鎖措置は緩和されつつあり1日から厳格な都市封鎖が解除された。段階的に規制は緩和される予定だが、100%の稼働を許可されている製紙企業もある様だ。
インドネシアでは輸入古紙に含まれるコンタミが0.5%から2%に緩和される措置が発表された。インドネシアでは2019年より古紙の船積み前検査が義務付けられ、コストアップから原紙の販売競争力が弱体化しつつあった。この規制緩和により輸入古紙が買いやすくなる事から、マシンの稼働を上げる中小企業もあるとみられる。
東南アジアの規制緩和に伴い、製紙の稼働を再開する事が予想されるが、買い付けを弱めていたアジアの製紙企業の古紙在庫は決して高くない。古紙の買い付けを再開させる可能性は否定できない。
中国では「インフレ抑制政策」や「共同富裕政策」によって景気に失速感がある上に、電力不足によって工場の操業が制約されている。製紙企業や段ボール工場は9月中旬ごろから操短や停機により減産を実施した。
台湾大手製紙企業である栄成紙業は、中国大陸の電力不足が原因の減産要請によって9月末から10月にかけて、段ボール35万㌧、白カード20万㌧、印刷用紙を13万㌧(合計70万㌧)減産する事になると見積もっている。 中国国内では9月末に50~100RMB、国慶節明けの10月7日以降さらに100RMBの段原紙値上げが発表された。稼働停止による需給の引き締まりと、製紙企業のコストアップが原因となっている。
一方、台湾島内に製紙拠点の主軸を置く正隆紙業は、中国大陸に10か所の段ボール工場を稼働しており、中国国内の段原紙価格が上昇すれば、安価な台湾原紙を使う事で競争力がでてくる。
ベトナムホーチミンでは都市封鎖が一部解除された事によって、生産活動が再開されており、靴、繊維、家具などの生産ラインが動き出している。各製造業は製品在庫も少なく、生産の遅れと第4四半期の業績を回復させるべく稼働率増加を急ぐ。 また製紙企業の原紙在庫も同様に少なく、需要が回復すれば製紙の稼働はそれを追いかけ上がってくるものと思われる。
現在正隆紙業は中国に10か所の段ボール工場、ベトナムに製紙拠点1、段ボール工場3工場を有している。永豊餘は中国に製紙1、段ボール12工場、ベトナムに6つの段ボール工場、栄成紙業は中国に製紙3工場、6つの段ボール工場を稼動させている。
東南アジア各国の製紙企業には、中国製紙企業が減産により在庫を減らしている上に、原紙価格の値上げを発表している事から、国慶節明けに段原紙の輸入引き合いが来るのではないかと期待している企業もある様だ。本来であれば秋需となる9月に原紙・古紙共に荷動きが悪かっただけに、遅れて需要が回復する事への期待感がでている。