■ 11月アジア古紙市況 輸出古紙価格反発 古紙発生減と船会社減便に起因
7月以降3カ月連続で下落の続いた段古紙のアジア相場が反発した。 特に一時100㌦付近まで下落した欧米古紙はAOCCで160~180㌦、EOCCで150~175㌦と底値から50~60㌦近く反発。 割高だった日本のOCC価格も、欧米古紙価格の値上がりに連動しCIF VIETNAM $160-175、TAIWAN $155-163(CY 20.5~21.0円/kg)と20~30㌦前後上昇している。 円高が進んだ事により、円価格はドル価ほど動かなかったが、12月の輸出価格は強含みとなる見通しだ。 このタイミングでの価格リバウンドは誰もが予想しなかったが、様々な要因が絡んでいる。 インフレによって欧米の消費が減退、古紙の発生量が減少した事や、急激な景気減退で貨物量そのものが減り海上運賃が大きく軟化したため、船会社が定期コンテナ船を減便した事で古紙の船積みが遅れた事が大きな要因となっている。また8月にイギリスで大規模な港湾ストがあり、こちらも貨物到着の遅れにつながった。 11月から年末に到着する予定だった8~9月契約分の欧米古紙の到着が遅れ、旧正月前の古紙在庫確保の為、急遽購買量を増やしてきた形だ。 しかし輸出商社や欧米の古紙サプライヤーは8~10月に契約した安い契約残を多く抱えており発生も少ない為、新たな売り契約を取って捌くことは容易ではない。 さらに価格が急落した7月から8月に東南アジア、インドメーカーは高い契約のキャンセルを連発した。今度は欧米の古紙サプライヤーがその仕返しとばかりにキャンセルも辞さない強気の姿勢を見せており、価格の急反発につながった。 また、今年は旧正月が1月21日と早い為1月に荷受できる期間は限られ、欧州古紙の年内到着は絶望的な時期となる。 欧米古紙価格が値上がりした事で、日本の古紙の割高感は消えその船足の短さを理由に引き合いが集まった。 特にベトナム向けはB/L(船荷証券)発行後のデポジットNOの入手に必要な期間と船足を考えると、日本の古紙でさえ12月クリスマス前までには船積みを完了しなければならない。 台湾向けも1月15日までに船着させるとなると、船積み期間は限られる。 スポット的な需要に過熱感がでている。
今回の価格反発の最も大きな要因は、船会社が減便した事で古紙の船積みができなくなった事が大きい。 クリスマス商戦を前に、急激なインフレによって消費は減退し、上海輸出コンテナ運賃指数(SCFI)は10月中旬時点で22年初めの水準から7割下落。 特に中国から北米を結ぶ航路は特に運賃の下落が激しく、2月の40フィートあたり平均8100㌦から10月には2100㌦と8割以上急落した。一般的に北米航路は往路に於いて2,000㌦を下回ると船会社は赤字になると言われ、船会社各社は運賃の下落をなんとか食い止めようと減便を実施した。 中国および東南アジアから北アメリカおよびヨーロッパに向かうコンテナ航路では、9月から10月にかけて全体の22%に及ぶ254便が運休。 具体的には北アメリカの西海岸行きが28%減、同東海岸行きが21%減、ヨーロッパ行きが17%減だった。 しかし、上海から北米西海岸向けスポットレートは11月中旬に1640㌦を下回り、運賃軟化は止まっていない。 また8月にイギリスのリバプール港で、11月には北米オークランド港では港湾ストライキが実施された。急激なインフレに対し賃金を上げる様要求するもので、港湾荷役に影響がでている。 減便やストライキの影響による船着の遅れと、既に古紙価格は底を打ったとの見方も広がり各製紙メーカーの資材担当は少し焦りの様なものを出すようになった。 加えて各国の古紙発生減はかなり深刻な様だ。
一方で東南アジアメーカーの中には、この価格反発は長く続かないという意見もある。 価格上昇は貨物の到着遅れと旧正月前の在庫確保が重なった事による一時的な現象という見方だ。 中国では習近平が国家主席に再選し、盤石な体制を整えたがゼロコロナ政策は継続するとみられ、経済・消費状況は悪い。段原紙価格は秋需期間中も引き続き弱含んでおり、今後年明けのその需要が回復する見込みはない。必然的にこの旧正前需要が落ち着けば再び価格は軟化すると楽観視する声も聞こえる。 実際、各国の紙業新聞では製紙苦戦の記事が連日報じられている。 台湾大手製紙企業である栄成紙業は11月7日、10月の損益は1億7000万元の赤字と4か月連続の赤字を計上した。10月の売上高は47億元で前月比2.6%増加したが、前年比では10%減となった。 10月はピークシーズンを迎え8~9月と比較して売上は改善したが、1月から10月までの総売上げは442.15億元と昨対比3.9%減少し、税前利益も3.48億元の赤字計上だった。 市場では秋需に向け段原紙需要が回復するとの期待感もあったが、欧米からのクリスマス需要も振るわず中国国内の大手製紙各社は10月末から値下げに踏み切った様だ。 またドイツの製紙企業は古紙価格こそ下落したものの、高い原燃料価格と電気代の上昇をカバーできないとして、10月販売分から紙管原紙価格をトン当たり90€値上げする事をアナウンスしていた。しかし、予想以上の需要低迷から値上げを断念したとの報道もあった。 欧州ではインフレによって需要が低迷し、段原紙需要も減退している為、紙管原紙だけでなく、段原紙も価格は弱含みとなっている。 20年上半期に40万㌧あった米国からのKLB輸入量も今年は25万㌧に留まった。 原燃料価格の高騰に一服感があるものの、引き続き製紙の製造コストは高いが、需要低迷によって製紙の在庫は増加しており、さらなる価格転嫁あるいは価格維持も難しくなりつつある。 その輸入元米国に於いても大手板紙メーカーのPCA(Packaging Corporation of America)が、ミシシッピ州ジャクソン市にある段原紙工場に於いてマシンを休転し、労働者400人をレイオフ(一時解雇)する事を発表した。 同社は今回の措置を、経済失速による需要低迷と過剰在庫が原因で、年末年始の休暇後に稼働を再開する見込みとしている。