■ 日本製紙 釧路工場で紙・パルプ事業から撤退 売電事業は継続
2020年11月05日
日本製紙は5日、釧路工場を閉鎖し紙・パルプ事業から撤退する事を発表した。2021年8月に新聞用紙や印刷用紙の生産を終了し9月に設備を停機する。保有する石炭火力発電所を活用した売電事業は続ける。これに伴い、21年3月期連結決算に約50億円を特別損失として計上する。
日本製紙の釧路工場は、100年前の1920年に操業を開始した。年間の生産能力は約22万トン。 20年の新聞用紙と印刷用紙の需要見通しは約970万トンで、デジタル化の進展によって、紙の需要は減少傾向にある。10年に比べて需要が3割近く落ち込んでおり、同社は2018年から生産拠点の閉鎖・統合により合計約 76 万トンの年間生産能力の削減を行った。
しかし新型肺炎の流行により印刷用紙需要の減少がさらに加速、釧路工場の生産停止に踏み切った。 現在同工場には6 号機 新聞・クラフト紙マシン(年産10.4万㌧)と 7 号機 新聞用紙・中下級紙マシン(年産11.7万㌧)の2機が稼働している。減産分は宮城、熊本両県の工場などで生産するほか、他社に委託して補う。
釧路工場閉鎖に伴い、同工場の社員約250人、関連会社約250人、協力会社の約100人の計約600人が影響を受ける。家族を合わせれば2千人ほどになる。日本製紙は配置転換(転勤)などにより直接雇用する250人の雇用は維持するとしているが、工場で働く多くの人たちは、市外、道外へ転勤、市内に残りたいなら転職を余儀なくされる。
また釧路の港湾への影響も懸念されている。釧路港の年間取扱貨物量の約1割を同社関連の紙・パルプなどが占めており、同社向けに石炭やチップを運んでいる船や、各社の製品を混載している船も無くなる。釧路港に貨物船は年間2700隻ほどが入港しており、100隻以上、少なくとも約4%の入港・荷扱いが失われる計算になる。市の収入である入港料や岸壁使用料も1千万円以上減少する。
同社の撤退は釧路市の経済と地元住民の生活に大きな影響が出ることが懸念されている。