■ インド段ボール企業採算悪化 政府に原紙輸出制限の嘆願書を提出
2021年5月26日
2020年のインド古紙輸入量は約600万㌧で、昨年の中国とほぼ同量の輸入量にまで市場が拡大している。5月中旬に古紙価格が急落した事は一時的とはいえ、同国の都市封鎖と古紙輸入ストップが市場に大きな影響を及ぼしたことを物語っている。
インドに於いて古紙輸入量が急激に増加した背景には、経済成長と2017年のGSTの導入により急速に国内の段ボール需要が拡大した事で多くの製紙企業が数多く立ち上がった事が挙げられる。
しかし、古紙の発生減と海上運賃の上昇により現在の古紙国際相場は前年度比2倍以上に上昇、AOCCの工場到着価格は一時22,000ルピー(32.56円/kg)まで高騰した。今年の輸入段古紙の平均価格は17,000ルピー(25.16円/kg)程で、国内バラ古紙回収価格も1,850ルピー(2.78円/kg)から5,500(8.14円/kg)と3倍の価格にまで上昇している。
インドの製紙企業は再生パルプや段原紙を高値で売れる中国に輸出した為、国内は慢性的な段ボール不足に陥った。 段ボール製函企業は、原紙不足と価格の上昇に加え、新型肺炎やインフレの影響で人件費やスターチ、薬品などのコストも60~70%上昇しているため採算が悪化、20%近くが倒産の危機に直面しているという。
高騰した原料価格を即座に全額BOX価格に添加する事は難しく、3月にインド全土に於いて段ボール企業のストライキも多発した。 さらに21年の段原紙及び再生パルプの輸出量はインドの生産量の30%近くに及ぶ200万㌧規模になるとの予測もあり、南インド段ボール箱製造業者協会(SICBMA)は政府に段原紙の輸出禁止を要求している。
今回インドの都市封鎖によって国際古紙価格が軟化したが、これからは段原紙価格も含めインドと中国の需給と政策、相互の関係性が市況に大きな影響を及ぼすと考えられる。