■ マーケットハイライト:米中貿易戦争で古紙高騰後高値維持。中国大手製紙は日本古紙を買い占め
2018年9月28日
中国政府の米国への報復関税により8月23日からアメリカ古紙に25%の関税が課せられ、昨月の関東組合入札直後日本の古紙価格が急高騰した。 JOCCは9月上旬には$310ドルを超える価格を付け、国慶節を目前に9月中旬以降調整の局面を迎え価格に一服感が出ているものの依然高値で推移している。
一方で米中の貿易戦争は加熱しトランプ政権は対中関税第3弾を発表、対象輸入額は総額約22兆円となる見込みだ。日本経済に今のところ大きな混乱は出ていないが、中国では急速な景気の冷え込みに懸念を示す声や報道が目立ってきた。今年3年目となる「独身の日」も中国国民は若干飽き気味、昨年ほどの盛り上がりは期待できない上に各段ボールメーカーは夏前から輸入紙を購入し秋需に備えて在庫を積み増している。さらに貿易戦争による景気の冷え込みで原紙の販売状況は芳しくない状況だ。
日本品の古紙だけが高値高騰独り歩きしている背景には、広島の水害や先日の関西台風被害により西日本の古紙がショートしていることに加え、25%の関税と9月中旬以降の米国品船積みは船足から年内の調達が困難であるため、大手製紙(玖龍社や山鷹等)が日本品を独占買いしようとしたことにある。 しかし、需給とは異なるこのライセンス消費購入はライセンス残を大量にもつ上記大手製紙のみとなっており他は追随していない。 さらには1,450万トンほど発行されたライセンスも9月末時点ですでに1,100万トン以上調達済みとの予測もあり、(7月末の通関統計で850万t、月間約120万t x (8-9月)=1,100万t) 今後追加の発行がある間は価格が維持されると思われるが、もしこの大手数社がライセンスを使い果たし購買を止めた場合、中国以外の東南アジア諸国は古紙や廃棄物原料の輸入規制の為販売が難しく、かつ米欧品が安価に調達できることから日本の古紙価格は下落する危険性がある。
2020年の全面輸入禁止に向け来年度の古紙ライセンスが如何ほど発行されるか不明な中、遅くとも11月中旬以降の中国製紙メーカーの購買意欲は鈍化すると思われる。 玖龍社、理文社はパルプ工場を買収しパルプ比率を上げる方向で動いており、2020年の古紙輸入禁止の動きは濃厚と思われ、来年以降中長期的に古紙価格が低迷する恐れがある。