日本の製造コストでは再生パルプビジネスに参入は困難

  ■ 日本の製造コストでは再生パルプビジネスに参入は困難

2019年7月20日

再生パルプがブームとなり始めた2年ほど前、日本からの供給も視野に入れて検討をしてみたがコスト面から難しく実現できなかった。 

当時上半期の古紙輸出価格は13~16円、秋需付近では30円以上まで暴騰し不安定であったこと、日本国内での段ボール原紙値上げと需給のタイト感から製造する余裕があるメーカーがなかった。 

今年の古紙価格は低迷が続くと思われるが、日本の製紙メーカーのミルコストは一般的に20~25円/kgと言われており、さらに抄速の遅い再生パルプメーカーは35~40円/kgかかると予想する。 

アジアメーカーは150~200ドル/tほどの製造コストで生産しており、建値18円の日本国内段ボール古紙を使い、アジア一高い人件費でコストを掛けて製造しアジアメーカーと競合することは実現性が低いと思われる。 

一方で日本国内での再生パルプ需要は建材向け等特殊用途が多く、販売単価も50~60円/kgと高い。 為替や輸送コスト等の課題もあるが、品質、技術的な問題をクリアすれば中国同様アジアで再生パルプを調達し輸入販売する方が理にかなっているのではないだろうか。 

いずれにせよ再生パルプ需要は中国向け主流で、中国の製紙拠点そのものが東南アジアに移転してしまえばその需要はなくなる為、長期的な展望のあるビジネスとは言えないのが現状だ。 また急激に増えた再生パルプの輸入に対し中国政府も警戒しており、税関検査率を50%にまで引き上げたとの情報も入っており、近いうちに明確な通関上の輸入規格が決定するとも言われている。 

さらに台湾に続き世界2位の再生パルプ供給元であるベトナムでは、政府からその製造に規制がかかったため輸出にブレーキが掛かり始めているとの事だ。 台湾同様古紙の輸入ライセンスに関わるもので、再生パルプの製造の為にベトナム政府は古紙輸入を許可しないという方針だ。 

今年の中国の再生パルプ輸入量は5月末時点で20万tと前年度比250%と大幅に増えているが、ベトナムからの輸入は3.5万t、前年度比 -11.5%と減少に転じている。

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