3Dプリンターの普及に包装需要は脅かされる?

  ■ 3Dプリンターの普及に包装需要は脅かされる?

2019年7月30日

今年に入りAIの開発が活発化し、まさにAI元年と言っていい程様々な取り組みが行われている事が気になっている。経済新聞にもAIに関する記事を多く見かけるようになり、その進化には日々驚かされるばかりで本ブログでも度々取り上げてきた。 紙パルプ業界にその大きな恩恵はまだないが、大手製紙企業等もその活用と開発に乗り出している。 EVの開発も盛んでAIの開発と相まって自動運転や燃費の改善は近い将来人手不足に悩む運送業界に確変的な変化があるのではないだろうか。 

これも個人的興味と余談だが、AIや自動運転、EVの開発と同様に今年特に注目され多く取り上げられているのが3Dプリンターだ。 日経新聞には連日新型3Dプリンターの発表と各ベンチャー企業の合併や提携が記事にされている。 

3Dプリンターと言えばビックカメラにも家庭用が販売されており、プラスチック線を熱融解しノズルから射出しホットメルトの様な方法で造形するイメージが強い。 しかし昨今報道されている最新の3Dプリンターはチタン粉末を原料にレーザーによる熱で溶解造形するものや、UV液体原料を紫外線で硬化するもの、多種に着色された原料を使用したカラー3Dプリンター、ひいてはコンクリートを射出する建築用3Dプリンターが開発されている。

 実際欧米では河川に掛ける橋や居住用の家が3Dプリンターにより建築、実用化されており大幅な建築時間短縮とコスト削減が実現している。 米軍でもF22戦闘機のチタン製部品がレーザー3Dプリンターで自軍製造されることが決定しており、従来の業者へ発注する方法では鋳型の維持保管と製造最低ロット、納期も2週間以上かかっていたが3Dプリンターを使うことにより各整備基地にデーター送信しオンデマンドによりリアルタイムな部品調達が可能になるという。 

家庭でもCADさえ覚えれば使い方は簡単で、個人で息子の誕生日プレゼントにプラモデルを射出してみた、主婦がガーデンセール用のフィギュアを作ってみたなどweb上でその作品が数多く投稿されている。 

3Dプリンターの技術が注目され急激に開発、普及し始めている背景にはやはりその圧倒的な利便性がある。必要なものを必要なだけ、従来の方式では造形不能だった立体的で複雑なもの(継ぎ目のないチェーンや幾何学構造)も製造できるようになった。当初3Dプリンターの課題であった大型物体の射出や原料が限定されるなどの問題も克服されつつある。さらに何といっても初期段階からそこまで機器自体が高価ではないという点も大きい。

3Dプリンターで建築された家。
24時間と短時間で価格も350万円という破格で建築された

家庭用3Dプリンターはすでに安いものは2~3万円ほどから販売されており3Dプリンター自体はすでに開発済みの現代技術で十分制作可能なのである。 3Dプリンターの普及は我々を取り巻く環境に直結し、大きな変化をもたらすのではないだろうか。鋳型造形や削り出しが減り、また実物を輸送する必要がなく3Dプリンターという出力機器さえあればデータ送信で事足りる。

オンデマンドによる販売は最低発注、輸送数量の制限を無くし在庫の必要性もない。物流量がそのものが大きく減少する可能性があるのではないだろうか。 

今あるコンビニのカラープリンターの代わりに3Dプリンターが設置され、通信販売で買った商品をスマートフォンで3Dプリンターを出力予約、造形射出完了時間に受け取りに行くといった新しい通販方式もそう遠くない将来実現するかもしれない。 電子書籍、タブレットやスマートフォンの普及により印刷用紙の需要は大きく減少した。一方で包装用途である段ボール需要は通信販売の普及により毎年増加している。

昨今の世界的な海洋ゴミ問題による脱プラの流れはさらなる紙包装の需要増をもたらすかもしれない。 しかし3Dプリンターの普及はその需要増の足枷、ひいては需要そのものの減少につながるのではないだろうかと危惧している。上記のようなコンビニで受け取るオンデマンド方式の3Dプリンター通信販売が実現すれば、コンビニへの素材輸送で事足りてしまい物流そのものを大き減らしてしまう。 

包装需要そのものがなくなってしまう可能性があるのではないだろうか。 生活が便利になる3Dプリンター、今後さらに他用途な活用と技術革新が期待されるが、製造業、運送業、包装資材業界においては大きな脅威になりうる存在だ。

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