■ 世界の段原紙増産情報
トルコでは2021年までに130万tもの段ボール増産計画が発表されている。 しかし現在のトルコの古紙回収は主に産業古紙が主体で回収率は20~25%に留まっており、市中回収古紙はリサイクルされていない。今回の新型肺炎により国内回収は前年度比60%ほど減少しており、深刻な古紙不足が発生している。
上記増産計画も控えトルコでの段ボール古紙需要は近い将来400万t/年にまで膨らむとみられ、輸入古紙をさらに200万t増やす必要がある。 トルコのリサイクル協会は欧州近隣諸国からの輸入を強化するとの方針を発表している。
ノルウェーのハルデンに本社を置くNorskeSkog社はフランスのGolbey市とオーストリアのBruckにある新聞マシン2基を段ボールマシンへ転抄し、段ボール事業に参入することを発表した。 年間36万tの新聞生産量を削減し、76.5万t/年の段ボール原紙を製造する。 製造品目は90-200g/㎡のテストライナーと75-170g/㎡の中芯。 2021年2月より18か月間 3憶5000万ユーロを投じ22年末の稼働を目指す。同社は欧州18か所に工場を持ちパルプから印刷・新聞用紙を製造する大手一貫メーカーで、過剰競争と印刷用紙需要の減退により経営が悪化していた。今回段ボール事業に参入することにより収益の改善を図る。
6月19日UPM社はフランスのChapelle Darblayにある新聞用紙工場を完全に閉鎖する事を決定した。同工場は2015年にも年産13万tの新聞マシンを停機しており、新型肺炎の蔓延により3月以降工場の全ての生産を停止していた。今回の工場閉鎖により残存23.5万㌧の新聞生産が削減される。 同社に限らず新型肺炎の流行は需要減の続く印刷業界に大きなダメージを与えた。 特に新聞用紙メーカーは世界中で停機・減産を余儀なくされており収益は圧迫されている。
カナダ・米国にパルプ・製紙拠点をもつパルプ・新聞製紙企業Resolute Forest Products社は元来の供給過剰と新型肺炎の需要減からケベック州の新聞マシン2基51万tを停機、全生産量の4割減産を実施している。 また国内の50%の需要、インド向け輸出需要が70%減退したことにより340万㎥の植林と木材加工工場を停止しした。再開の目途はまだ立っていないという。
昨年末古紙ジャーナルの講演会にて欧米での段ボール増産計画のお話をさせていただいたが、欧州での増産は新型肺炎での影響で工期が遅れ気味ではあるものの、稼働は開始する見込みだ。さらに新聞の需要減により上記NorskeSkog社のような新規転抄計画も発表されている。 今回のコロナ過で市況は大きく乱れたが、新聞マシンの転抄など増産発表が相次ぐ。 段ボールも中短期的に景気減退による消費減は避けられず、さらには中国国内の増産計画も多数発表されており、世界的生産過剰になるリスクも否定できない。 古紙・段ボール原紙の需給構図は中長期的に大きく変わってしまうのではないだろうか。