■ 中国国内の段ボール原紙増産計画
2020年6月
4月29日の「固形廃棄物環境防治法」の改定により第二十四条に廃棄物原料の輸入をゼロにする目標が明記された。 欧米各国で都市封鎖が解除され古紙の収集・輸出は再開されつつあるが、近い将来古紙の輸入は禁止となり中国国内に於いて古紙がタイトになることは間違いない。大手製紙各社は国外に再生パルプ工場を建設し、古紙に代わる原料として古紙パルプの輸入が増えつつある。 将来的に東南アジアへその原紙生産拠点そのものを移していくとの方針を発表しており、土地の買収や許認可の申請、工場の建設など準備を進めている。
一方で中国国内においても、新興中小製紙企業を中心に増加する内需と包装需要をにらんだ増産計画が多数進行中だ。
RISIによると2020年だけで135万tの段ボール原紙増産が発表されており、290万tが計画準備中との数字もある。 21年以降も多数の増産が発表されるとの予測を示しており、不足する古紙原料事情をしり目に中国での増産は加速している。
特に薄物強化芯や高強度ライナー、パルプ設備の建設が目立ち、古紙の輸入規制の始まった2018年から中国国内の板紙消費量は10%近く減少したが、強化芯採用によるシングル化が進みつつある様だ。
古紙の輸入制限に伴い原紙に含まれるパルプの保有率が上昇しており、「中国産業新聞」の記事では19年の木材パルプの製紙用途消費量は3,581万tで前年度比8.42%増加、生産量も1,268万tと10.55%増加している。紙に配合されているパルプの割合も2013年26%であったが19年は37.27%まで増加したとの統計もある。
現在進行中のマシン増設を個別案件ごとに調べると、
中国最大手である玖龍社は唐山工場(河北省)に20.5憶人民元(約330億円)を投資し、年産50万t/年、75~140gの強化中芯のマシンを増設、テスト抄紙を3月28日から開始した。 また湖北省に46憶元を投入し今後二年間で55万tの木材パルプラインと、セミ芯とライナーマシン2基合計75万tのダンボール原紙製造ラインを導入する。 木材パルプは30万tのセミケミカルパルプラインと25万tのBCTMPラインで、当該工場の中芯製造の原料として利用する予定だ。 BCTMPは中国に展開する同社の各工場に供給する。 玖龍社が中国国内で建設するバージンパルプの製造工場は今回が初となる。
3月27日には世紀陽光社が年産40万tの大型中芯マシンを稼働させている。マシン幅7.5m、抄紙速は1250m/分で70-110gの薄物強化中芯を製造する。
山鷹紙業の華中工場22号機も5月24日稼働を開始した。 幅8.6m抄紙速1200m/分の50万tマシンで120-170gのライナーを製造する。 同工場では昨年21号機(55万t)が稼働開始しており、今後23号機(40万t)の導入も計画されている。 また、広東省に建設予定の工場に100万tの製造ラインを増設、(54万t/46万tのライナーマシン2機)25億9千万人民元を追加投資し、20年初旬着工、21年稼働を目指す。 50万tの古紙パルプライン2機も建設し最終的に200万tの製造を目指すという。
さらに金田紙業が江蘇省盆城市に年産250万tの段ボール原紙(内50万t 白板)製造拠点建設することを発表している。
一方中小新興企業もその製造能力を増強しており、現時点で下記数社がすでに稼働を開始している。
企業名 マシン幅 抄紙速 生産品目 年産 稼働日 備考
安徽省小平林平紙業 5.6m 900m/分 高強度ライナー 25万t 1月16日 PM6
合峰特造紙業 5.3m 700m/分 (90-130g)薄物ライナー 20万t 4月14日
徐州中興紙業 5.6m 薄物強化中芯 20万t/年 4月4日 5.5憶人民元
山東威海龍崗紙 770m/分 強化芯・ライナー 20万t/年 5月8日 3.6憶人民元
山東威海龍崗紙 5.3m 770m/分 (90-155g)高強度ライナー 20万t/年 3.6憶人民元
奏山石膏紙業 石膏原紙 30万t/年 4月15日
浙江省義南紙業 6.6m 1400m/分 (60-140g)中芯 40万t/年
貴州省鵬昇紙業 25万t 高強度中芯マシン 35万t ライナーマシン 19年12月 18.8億人民元
北京の西に位置する山西省においても多数の製紙企業が進出を計画している。同省は人口3,700万人ほどで石炭の産出量が多い事で有名だ。北はモンゴル自治区と接しており一人当たりGDPは6600㌦ほどと貧困層の多い都市ではあるが、同省での’19年紙・板紙生産量は生産量192.9万㌧、内123.6万㌧が中芯、石膏原紙43万t、その他となっている。
19年の段ボール原紙生産量は61万㌧、前年度比で32.18%増加している。 今後も増産計画が多数発表されており中国国内で3番目に増産計画のある省となる。 20年はさらに20万㌧の中芯の強化中芯生産設備が追加され、25年までに発表されている増産計画を加算すると総生産量は300万㌧を超える。
山西省ではパルプの生産拠点は少なく、製紙の主要原料は地元の回収古紙に依存している。パルプの使用率は10%で残り90%が古紙利用だ。また港から遠く古紙の輸入ライセンスを持っている企業は1社となっており、2019年の古紙輸入量は2万㌧にとどまっている。今後生産増強により原料の需給ギャップが大きくなることが予想される。
山西省の増産詳細は中小企業がメインとなり、山西強伂紙業が21年10月より30万tのライナーマシンを稼働予定。山西一帆紙業は年産60万tの強化中芯生産拠点を建設予定で現在第一工期である1号機15万t/年がすでに稼働している。 山西華天基紙業は‘18年に10万t、’19年に20万tの強化中芯設備を増強した。 山西華南紙業‘19年5月に10万tの中芯マシンを増強、さらに20万tの強化中芯設備を増加予定。 山西省外貿平遥包装社は25万tの強化中芯製造予定、运城市自強紙業は100万tの大型投資案件で強化中芯を増設予定だという。
中国国外では景興紙業がマレーシアに年産80万tの再生パルプ、60万tのテストライナー工場建設を計画している。また理文のミャンマー再生パルプ工場(40万t)が稼働を開始し3月11日に初の綱積み分1万4000tが常熟港に到着した。 同社はミャンマーとは別にマレーシアに段ボール原紙PM23/25の2ラインがあり年産120万tの生産能力を有している。
中国通関統計によると今年4月の再生パルプ輸入量は前月比9.62%増の19.4万t、前年度同月比30.61%、1月~4月の総計は60.1万tで前年度比455.2%と大きく増加している。主な輸入元は台湾23.78%、ラオス22.89%、アメリカの15%となっている。