■ 北越コーポレーション 三菱商事の所有する自社株買い戻しを発表
2020年2月12日
北越コーポレーションは21日、三菱商事が保有する自社株式を取得すると発表した。
北越コーポレーションは昨年7月20日、三菱商事と2006年から結んできた業務提携を解消している。 三菱商事は北越コーポの株式の19.32%を保有する筆頭株主。2006年に王子製紙が北越製紙に敵対的TOBを仕掛けたことを受けて、三菱商事が北越の第三者割当増資を引き受けた。岸本晢夫副社長(現社長)は三菱商事出身で、三菱商事に支援を求めた形だ。当時の取得額は約300億円。三菱商事は13年にも北越の持ち株の一部を売却している。業務提携の契約は最初は5年間で結び、その後は1年ごとに更新してきた。昨年7月20日に満了日を迎え更新しなかった。
北越は140億円を上限とし、三菱商事が保有する株式の一部を含む自社の2300万株を取得する。今回の売却で三菱商事の持ち株比率は6.08%以下となり筆頭株主を外れる。
提携解消の理由は、北越の海外生産拠点の整備が進み、自身で原材料の調達や国内外の販売業務を行えるようになったということになっている。
北越社の19年3月期の海外売上高比率は35%。20年3月期までの中期経営計画では25%を目標として掲げており、前倒しで達成した。15年には三菱商事からカナダのパルプ製造会社、アルバータ・パシフィック・フォレスト・インダストリーズを買収した。8月には中国でレシート用紙などに使う感熱紙の生産も始める。
しかし、2019年4月に三菱製紙は王子ホールディングスに33%の株式を売却、三菱商事は製紙業界への出資を含め見直す動きをしているとの見方が大きい。 業務提携解消直後、資本関係について北越は「今のところ変わらない」、三菱商事は「コメントを差し控える」としていたが、業界からは三菱商事は提携を解消した後も株を持つ続けるほど甘くはないとの声もでていた。そのためこの三菱商事の保有する株式の行方に業界で注目が集まっていた。
一方で北越が三菱との業務提携を発表する直前、北越は大王製紙相手に起こしていた88億円の損害賠償が棄却されている。一審東京地裁判決は「事業計画の実現に向けた設備投資のため、資金需要があった」という大王側の主張を認めた形だ。
北越は、井川意高・元大王製紙会長が起こしたカジノの事件で(総額106億円超)勃発した大王本体と創業家のトラブルを仲裁し、12年に大王株を大量取得して同社の筆頭株主となっている。 創業家のもつ大王関連会社の株式を北越が買取り同値で大王製紙に売却、大王製紙本体の株式は北越が所有持分適用関連会社となる合意がなされていた。
しかし、創業家の影響力が強く残る大王は、大王の関連会社である大王海運に北越株の2%取得させるなど支配返しをもくろみ両社の関係は冷え込んでいた。
さらに15年、大王が転換社債の発行を決議したことで株価が下落。北越は損失を被ったとして大王の取締役らを相手に損害賠償を求めていた。今回の転換社債発行の目的が北越の大王株式保有比率の引き下げにあり、恩を仇で返された形になった北越は怒り心頭だったわけだ。
三菱商事の保有する株式の行方は、支配返しを目論む大王製紙か、一度はTOBを仕掛けた王子だが、北越には大王に株式を取得される位ならという意見もあり、王子ー北越の合併路線も噂されていた。
また、北越は今年4月の王子春日井工場の火事の際微塗工紙のOEM生産を請け負うなど両社の関係は急接近している。OEM生産を行った3号機は段ボール原紙への転抄が計画されており、家庭紙関連事業への参入も噂されている。販売ルートや製造のノウハウを含め王子HDとの協力体制も考えられた。
三菱製紙との業務提携解除、大王、王子との関係も含め今後の業界再編、北越の経営方針がどのようになるのか気になる所だ。