■ エネルギークライシス イタリア大手製紙企業 天然ガス高騰に操業停止
2022年3月9日
イタリアの大手製紙企業Pro-Gest社はイタリア国内における6つの製紙工場すべてに於いて生産を一時見合わせる事を発表した。 ロシアのウクライナ侵攻によって天然ガス価格が高騰しており、操業が不可能だと判断した。 またCartiere del Polesine社もロレオ工場に於いて段ボールの生産を一時見合わせる。
欧州天然ガス先物価格は、足元で一時1MWh(メガワット時)=345ユーロの史上最高値を記録。昨年3月安値15.5ユーロからは、約22倍と高騰している。
イタリアのエネルギー輸入依存度は78%と高く、天然ガスは約46%をロシアから輸入している。イタリアの国営エネルギー会社ENIは天然ガスの戦略的な長期契約をロシアと締結する事で安定的な燃料確保を実現していた。
ロシアから欧州への天然ガスパルプラインは、ウクライナを経由するルートとベラルーシを通るラインとバルト海海底ノルドストリームがある。イタリアは南北からガスパルプラインを引いているがいずれもウクライナを経由しており、ロシアのウクライナ侵攻によって天然ガスの供給が滞った。 ドイツやフランス、英国はベラルーシ経由ルートとノルドストリームから天然ガスの供給を受けている。 2本目の海底パイプラインとなるノルドストリーム2の建設はロシアとウクライナの関係悪化を懸念してのものだった。
ロシアへの経済制裁には後ろ向きだったドイツもロシアへの天然ガスへの依存度49%と高いが、旧式化した原発や石炭発電などを稼働させ何とか電力を維持している。 フランスの天然ガス依存度は24%だが原子力発電の比率も5割以上と高く、原発能力に余力もある。 しかしイタリアは石炭発電所もなければ原発もないため、最もロシアへの経済制裁の影響を受ける事となった。
いずれにせよ、天然ガス不足の影響は欧州全土へと広がりイタリア以外に於いても操業停止を余儀なくされる企業がでてくるのは時間の問題だ。
3月9日、Norske Skog社はオーストリアブルック工場において、天然ガス不足を理由に2機の新聞マシンを停止させることを決定している。両機の生産能力は合わせて年間38万㌧規模となる。ドイツのLeipa Group社も4月1日より段ボール原紙を㌧あたり130€値上げを発表した。さらに原燃料価格が上昇する場合5月以降の生産を見合わせざるを得ないことも示唆している。