世界古紙・板紙市況 世界恐慌の兆し?欧州・中国の不調とアジア市況

  ■ 世界古紙・板紙市況 世界恐慌の兆し?欧州・中国の不調とアジア市況

ロシア産天然ガス供給停止に起因する欧州のエネルギー価格の高騰により、製紙のコストが増加した事に加え、インフレによって消費が冷え込み欧州各国の製紙企業は相次いで休転を発表している。 北欧スウェーデンのある製紙企業は電気代が1日に5.8万€(1200万円)を超え、年間1900万€(270億円)と以前の6倍以上に高騰した事で8月31日から生産停止を余儀なくされたという。 また英国大手Ds smith社はエネルギーコストの大幅増加を理由に9月8日から140€(20円/kg以上)値上げを発表、値上げは同日発注分から適用する緊急値上げを行った。 

英国では一般家庭の電気代が年間60万円を超えるほど電気代が値上がりしており、消費にも大きな影響がでている。 さらにドイツやイタリアの製紙企業でも休転が相次いでおり、欧州各地ではコスト増と需要減から値上げと休転を同時に行う異常な状況が続いている。 

6月以降欧州の製紙休転と消費減退によって欧州古紙は余剰し、輸出価格は軟化を続け、9月中旬時点の東南アジア向けEOCC最安値は、140㌦を割り込む水準にまで急落。 個人的には海上運賃の兼ね合いから古紙の最安値は150㌦前後で底を打つと予測していた。しかし景気減退で荷量が減少した事で海上運賃が値下がりし、価格が底抜けした状態となった。 9月末時点でイタリア-ベトナム間の海上運賃は$1400/コンテナと2ヶ月間で1000㌦以上下落、古紙価格もほぼ半値となった。運賃コスト値下がり分はほぼ売価へ還元された形だ。 

AOCC価格もサマーバケーションの回収減にも関わらず、インフレによって消費が減退、段原紙需要が悪化したことで古紙は余剰気味、そこへ欧州同様海上運賃も値下がりも重なった事で価格が135-170㌦まで軟化した。 JOCC価格も軟化はしているものの、欧米古紙価格と比べ高止まりした状態となっている。古紙発生が悪い事に加え、国内メーカーからの発注量も悪くない。

古紙問屋は建値を割り込んだ価格で輸出する必要が無く、輸出商社が心理的に安値で成約できない事が背景にある様だ。現在のJOCC価格はCIF VIETNAM $170~175、TAIWAN $130~140となっており、欧米古紙価格との価格差が開き始めている。 通常JOCC価格はEOCC95/5より10㌦高く、AOCC#11より10~20㌦安価で推移するが、現在の価格はそのどちらよりも20㌦以上高い。 この状態では東南アジアメーカーの日本古紙への優先順位は低く、輸出商社の契約残も少ないとみられるが、円貨ベースの輸出価格は国内建値が意識され、CY18.5~20.0円前後を維持している。 

さらに9月21日にFRBが3回目の利上げを決定した事を受け、外国為替相場は145円と24年ぶりの円安を記録。 欧米と異なり国内古紙需給のタイト感から、強烈な円安と海上運賃の下落が逆に価格が下がりづらい環境を作り出している。今年1~7月の段原紙輸出量も62.3万㌧と年間100万㌧を超える勢いとなっており、段ボール古紙国内消費量は527万㌧と前年度比103.3%増加した。その一方で古紙の発生量は588万㌧(99.2%)と少なかった。 

内閣府の発表によると今年4-6月のGDPギャップ(物とサービスの需給ギャップ)は▲2.7%で約15兆円の需要不足だった。それに伴い鉱業生産指数、製造業稼働指数共に5か月連続の前年度比割れ、小売り売上も3か月連続の前年度割れで、物価上昇に伴い消費が落ち込んでいる。 消費の減退は古紙の発生量にも影響しているものと思われ、国内古紙消費量の増加と相まって問屋在庫は非常に薄い。

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