■ 世界のパルプ生産動向
2021年4月30日
玖龍紙業の関連企業である海南中南資源有限公司は中国建設局と協力し、玖龍社重慶工場に於ける古紙代替え技術開発プロジェクトを開始した。12憶元(約1.7憶㌦)を投資し既存の白板/白カード生産設備の古紙供給システムを農業・林業廃棄物(竹チップ、唐辛子枝、木材の剪定廃材)などを利用した機械パルプを製造できるように改造する。 技術が完成すれば年間30万㌧の植物原料と木材原料を使用し50万㌧の混合パルプ(20万t化学熱機械パルプ(TMP)と30万㌧の半化学パルプ(SCP))が製造できる。また、植物原料は近隣の重慶市江津区の貧困地域から調達する事で地域の雇用促進にも貢献する。 同社重慶工場では現在80万㌧のライナー、70万㌧の中芯、50万㌧の白板マシンが稼働しており、年間総生産量は200㌧。古紙輸入禁止による原料不足に対応する。
朕盛紙業社は120万㌧の晒広葉樹パルプ(BHK)と、106万㌧のセミケミカルパルプ、204万㌧のアイボリー、40.8万㌧の上質紙(UFP)、30.6万㌧のティッシュマシンを今後5年以内に建設予定だ。子会社であるLainsheng Paper は275万㌧の再生ベース段ボール原紙の製造能力がある。
フランスのパルプメーカーFibre Excellence Tarascon社はパルプの製造の比率をUKPにシフトする。 同社は排水環境問題(重金属や窒素化合物)においてフランスやカナダで訴訟に発展しており、多額の罰金と改善命令がだされ現在も裁判中となっている。昨年10月に経営難から民事再生の手続きを行い、従業員の給与未払い問題でストライキが発生するなど地元ニュースを騒がせていた。フランス政府は雇用の維持の為、同社に追加の€160万財政援助措置をする事を決定した。昨年すでに700万ユーロの支援融資を受けており、追加の財政支援は経営の立て直しに使用される。今後製造コストの安い未晒パルプの生産比率を上げるとしており、21年は昨年25%前後であったUKPの生産を全体の50%にまで引き上げ、財務状態の改善を図る。またコスト削減の為バイオマスボイラーの導入も検討されている。
チリのパルプメーカーであるアラウコ社はBEKの生産拡張工事が新型肺炎の影響で10月まで遅れる事を発表した。当初の稼働予定は3月であったが、現時点で75%程の工事進捗率となっている。年間156万㌧の漂白ユーカリパルプライン2号機を増設し、3号機は51万㌧の製造能力に拡張される。1号機の29万㌧(1号機)のBEKラインは新マシンの拡張により停機となる。
カナダのPaper Excellence社はカナダのブリティッシュコロンビア州にあるMaclenzieパルプ工場を閉鎖する事を発表した。同工場は2010年に買収し、3憶6000万㌦を投じ設備を更新していた。しかし生産設備が小さすぎた事、Covid-19の影響により需要が低迷し20年6月末から一時的に操業を停止していた。これによりNBKP 24万㌧(ADMT)の製造能力が削減され,250人の労働者に影響がでると見られる。同社はカナダに本社を置くパルプ及び印刷用紙を製造するメーカーで、従業員数は2800人、7工場で280万㌧の製造能力をもつ大手製紙企業だ。
ストラエンソ社はスウェーデンのKvarnsveden工場とフィンランドのVeitsiluoto工場に於いて2021年第3四半期でパルプ及び製紙事業から撤退する事を発表した。同社の経営陣は撤退の理由について「印刷需要の減少は新型肺炎によってさらに加速し、収益性が悪化した。欧州では印刷用紙は生産過剰であり、生産能力の調整が必要と判断した」と説明している。両工場が閉鎖されると非塗工紙(SC)79万㌧、新聞用紙は56.5万㌧、TMP90万㌧と36万㌧のグランドパルプの生産能力が削減される。同社の総製造能力は35%減少し年間260万㌧、売り上げに占める印刷用紙の比率は10%減少し売上高も約6億ユーロ減少するが、3500万ユーロの赤字が改善される見込みだ。なお同地域での木材調達事業は継続する。