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ロシア紙のパルプ産業とウクライナ戦争の影響

世界のロシアへの木材紙パルプ産業依存度

ロシア紙のパルプ産業とウクライナ戦争の影響

  ■ 世界のロシアへの木材紙パルプ産業依存度

2022年5月26日

ロシアは森林資源豊富な国で世界の森林面積の1/5を占め、1/3が原生林、64%が自然再生林、2.4%が人工林で構成される。木材種は主にカラマツ、カンジパイン、ホワイトパイン、レッドパインなど針葉樹が多く、輸出はカラマツが最も多い。木材パルプ生産能力は約1000万㌧で世界の4%を占め、紙、及び板紙の生産能力は1200万㌧となっている。紙生産能力のうち300万㌧が印刷用紙、85万㌧が家庭紙、850万㌧が包装紙となっており、ロシア最大大手のIlim社の生産能力は1150万㌧に及び総生産能力の52%を占めている。 近年の経済発展と中国向け輸出需要の増加により、新規生産マシンの稼働計画が数多く発表されており、400万㌧の段ボール原紙、30万㌧の家庭紙、480万㌧のパルプマシンが増設される。 ロシアは世界有数のパルプ輸出国である反面、コットンリンダーパルプは年間21万㌧程度、米国、スゥエーデンなどから輸入する。また80~90万㌧のコート紙を欧州から輸入している。

ウクライナ国内の紙及び板紙生産能力は120万㌧で、内80万㌧が段ボール原紙、22万㌧が家庭紙となっている。ウクライナは紙を輸入に依存しており、主にフィンランド、ドイツ、ポーランド、ロシア、中国、スウェーデンからの輸入が全体の64%を占めている。

ロシアのパルプ輸出量は年間210~230万㌧程で世界の貿易量の4~5%を占める。輸出向け先は60%以上が中国となっており、韓国や欧州にも一部輸出している。このうちBSKの輸出量が120万㌧となっており中国向け割合は81%を占める。50万㌧近く輸出されているUKPは中国向けが47%、韓国向け10%ドイツ向け8%だった。 紙及び板紙は段ボールを年間129万㌧、新聞紙92万㌧、印刷用紙33万㌧、クラフト紙25万㌧輸出していた。 

ロシアのウクライナ侵攻により、欧州はロシアに対し経済制裁を実施。化学品など製紙に必要な物資も規制の対象となったことで、ロシアの製紙企業の中には副資材不足で操業停止を余儀なくされた工場もあった。 欧州ではロシアからの輸入に依存していた木材チップやパルプが不足し、一部の地域において新聞紙、印刷用紙などが不足する事態となっている。

また、ロシアの製紙生産活動が制限されたことは、中国にも大きな影響を与えている。 中国は21年の古紙輸入禁止に伴い、不足する製紙原料を輸入パルプに依存するようになった。21年のパルプ輸入量は2370万㌧でその内130万㌧(6%)がロシアからの輸入となっている。品種別では年間109万㌧輸入されるUKPのうち20万㌧(約18%)がロシアからの輸入で、チリについで二番目の供給元となっている。BSKは年間840万㌧輸入しロシアからの輸入は100万㌧(12%)だった。紙板紙部門では主に新聞およびクラフト紙をロシアからの輸入に依存している。 21年は新聞およびクラフト紙輸入量の50%がロシアからの輸入に依存し、ロシアからの段ボールの輸入量は約55万㌧で輸入量全体の9%を占めた。そのうち19万㌧がパルプ由来のKLBの輸入で北米からの輸入に継いで多い。

中国の木材チップは輸入依存度が高く、消費量の40~80%を輸入に依存している。L材チップの輸入が主となっている為、ロシアからの輸入は限定的でベトナム57%、オーストラリア18%、チリ6%、ブラジル4%だった。 一方ロシアからの針葉樹チップの輸出量は年間80万㌧となっているが、ウクライナ戦争開始後、ロシアは欧州、米国、カナダ、日本、韓国、台湾、オーストラリア向けの輸出を禁止。これらの地域に於いて針葉樹チップの需給に影響がでている。またロシアはウクライナ侵攻以前から、23年より針葉樹丸太の輸出制限を発表している。中国はロシアから年間690万㎥の針葉樹丸太を輸入しており、これは輸入量全体の11%を占めた。また中国同様ロシアと国境を接するフィンランドも丸太輸入をロシアに依存しており、その輸入量の77%がロシアからの輸入だった。

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