中国輸入古紙規制問題:輸入ライセンス更新ガイドライン

  ■ 中国輸入古紙規制問題:輸入ライセンス更新ガイドライン

2017年11月28日

11月11日アリババの「独身の日」の売り上げは昨年比40%増の1,683憶元(約2兆8,800億円)となり過去最高を記録した。スマートフォンの普及により中国でのEC(通信)販売は右肩上がり、購入の90%がモバイル機器からの注文だったそうだ。世界一の人口と広大な国土に起因する買い物事情、中国人特有の爆買いが中国の高度経済成長とモバイル機器の進歩と相成ってEC販売の急速な成長を後押しした。これらEC商品に必要な包装資材の需要の拡大と先般から騒がれている古紙原料の輸入規制問題で世界中のパルプ・古紙事情は一変し、今後の市場価格の推移は中国次第と世界中の紙パ関係者がその動向に注目している。

その来年度の古紙輸入ライセンス更新について記載された環境再生資源の輸入に関するガイドラインが10月23日に発表され、更新条件は下記とされた。

1.年間30万t以上の生産能力且つ自社パルプ、抄紙ラインを所有していること。

2. 過去1~2年以内に古紙を輸入あるいは他社に転売及び委託加工にて行政違反 をしていないこと。

3. 環境保全に違反せず罰金を受けなかった企業。

4. 今後輸入された古紙のエンドユーザーは輸入の名義人であることを条件とする。(代理輸入、転売の禁止)

昨年輸入ライセンスの交付を受けた製紙会社の中で30万トン以下は88社、そのうち25社が富陽の中小製紙メーカーだ。2017年の古紙輸入ライセンスは2,810.76万tonが交付され、うち裾もの3品は2,204.65万トン、その他が606.11万トン。30万トンの生産量以下に該当する88社の2017年の輸入量は282.85万トンで全体の10.06%に該当する。

この内未選別古紙に関する取得は190.96万トンになる。25社の富陽の製紙メーカーはその中の109.08万トンを占める。これに上記残り3項目の要件を満たさない企業の輸入量を含めると2017年承認の輸入許可に比べ約797万トン(28.36%)のライセンスが2018年に更新されない見込みとなる計算だ。

30万t以上の生産能力を有する大手企業の中でも先般の環境審査にて罰則を受けた企業は数多くあり、それらの企業もライセンスの更新ができない場合、来年度の中国向け輸出量は予想以上に制限される可能性もある。

ライセンスの更新申請には工場ごとに特定の廃棄物排出量の許可証を提出する必要がある。許可基準は工場別の適用になるのではないか、また従来1年ベースの更新、半年ごとの増枠であった輸入ライセンスの許可は新制度で四半期ベースの更新になるのではいかと言われている。

年2回の更新が4回に変更される理由としては、先般の環境検査によるライセンス更新停止は半期分の輸入停止という大きな影響が出た。これには業界関連企業と地方政府から中央政府に対して反発があり、その異議申立てに対する配慮があったようだ。中国の地方政府関連筋の情報によると、来年度の輸入法規は今月中には法案がまとまるだろうとのことだが、政府はそれぞれの部門において有識者会議を行っており、工場の環境審査をはじめ手続きが煩雑化し承認にかなりの時間を要する様になることが懸念される。

ライセンス更新手続きがスムーズに行わなければ、毎回今回のような輸入古紙の滞りが発生し正常な市場価格を維持できない為、年内に更新要件とその手続きの方法が確定することを願うばかりだ。

多くの製紙メーカーは来年1月中旬ごろにライセンスが更新されるのではないかと予測している。船足の短い日本の古紙は12月中旬ごろ船積み分で年明けの到着になる為、短期的に必要分を購入、年末需要が一服したところで購入を控え始めている。

一方アメリカの古紙は今購入しても年明け後の1月中旬過ぎの船着、ライセンスが更新される事を前提として大手中国製紙メーカーは購入を継続している様子だ。資材担当は「万が一年明け後古紙が船着するまでにライセンスが更新できなかった場合、通関が滞る可能性がある。それに備えて船会社に通常2週間のコンテナフリータイムを4週間に延長する様に交渉している」とも言っていることから未だライセンスの更新条件や更新時期が不確定の中見切り発車で動いている様だ。あるいは政府と裏で話がついているのだろうか。

11月9日に「輸入個体再生原料における環境保全基準」が発表された。8月に発表された来年度の輸入古紙の品質基準では従来1.5%未満としていた規格外古紙(*参照1)を0.3%未満と規定したが、欧米関係国から不満の意見が多く今回の保全基準では1.0%未満に修正されていた。

日本品の段ボール古紙品質基準は本来より禁忌品B類混入を0.3%未満と規定(次頁参照)されている為問題ないが、AOCC #11は禁忌品1%未満、規格外品を含む古紙5%を超えないこととなっているため、現在のアメリカ品のオファーは#12 (DS OCC【選別された段ボール】禁忌品0.5% 規格外古紙を含む禁忌品2%超えない) が主軸になっている。

しかしその後1.0%から0.5%にさらに変更になる可能性があるとの噂もあり順次ライセンスの更新ごと、あるいは段階的に下げていくのかは不明だが、以前よりも厳しい基準でかつ民間レベルではなく法律に明記された形での政府主導の品質管理は各流通に「リスク」といった形で懸念されている。今までは多少の品質問題は製紙側との個別交渉の値引き等で対応できていたものが、今後税関での差し押さえ、シップバックのリスクに繋がるのであれば仕入先を選定しリスクヘッジする方法しかないからである。

 「輸入個体再生原料における環境基準」に定められている用語範囲

禁忌品:燃えた古紙、消火剤の付着した古紙、容器類、国家危険廃棄物目録に記載された物品、別表GB5085.1~GB5085.6までの有毒、腐食、可燃、等の物質

規格外古紙:廃木材、廃ガラス、廃プラ、廃ゴム、廃不織布、昇華転写紙、アルミ蒸着品、感熱紙、含侵紙、タック紙、壁紙、ワックス紙、油を含んだ紙、シリコン紙、複写紙等

その他:放射性物質の混入禁止、古紙(包装/付属物を含)からの反射放射性物質(r)の基準値は仕出港の自然値の3倍以下。表面の放射能汚染レベルは表面積300c㎡の最大平均値で(α)0.04Bq、(β)0.4Bq

廃棄爆弾、鉄砲等の危険物の混入禁止


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