■ 今後の古紙・原紙需給、中国は古紙不足から慢性的な原紙不足
2020年2月20日
中国政府は21年に古紙の輸入を極力ゼロにするといった目標を掲げているが、中国国内では圧倒的不足する古紙問題をどのように解決していくのか。
代替え原料として再生パルプの話題がよく出るが、輸入が昨年より急激に増加し、19年は94万t/年(前年度比+320%)となった。青島税関によると将来的には800万tになるだろうとの予測だ。実際米国で約200万t、東南アジアで390万t、欧州でも100万tの再生パルプ工場が立ち上がる予定で、近い将来全世界で600万t以上の生産能力が備わる事となる。
しかし一方で’15年には2,900万tあった古紙の輸入はゼロとなり、600万tの再生パルプでは到底カバーできない程の需給ギャップが生じる。
前頁のグラフは中国の紙・板紙の生産及び消費量、その原料構成比を示したものだが棒グラフが原料構成、折れ線グラフが消費と生産量の推移となる。 20年以降の予測においては
①古紙回収率が今後も過去8年間の平均である0.68%ずつ向上 ②古紙回収量は板紙消費量x回収率で算出(消費連動) ③紙・板紙の消費量は1.6%ずつ増加(過去平均値) ④紙・板紙生産量は生産キャパではなく原料の調達可能量が生産の限界点として仮定 ⑤再生パルプの輸入は2025年(600万t/年)をピークに減少 ⑥環境規制により2021年以降古紙の輸入が完全に禁止
といった仮定条件を基に作成した。 このグラフ<中国紙・板紙生産消費量、原料構成比>からも原料不足によって中国の紙・板紙の生産量が減少し原紙の需給ギャップが深刻化してくる事が読み取れる。 特に古紙の輸入量は17年 2,572万t、18年1,703万t(前年度比-34%)、19年 1,015万t(-41%)と減少する中で、OCCは17年1,506万t、18年1,238万t(-18%)、19年 795万t(-36%)とやや緩やかな減少に留まっていた。19年は輸入量の78%がOCCを占め今年のライセンス減は段ボールの輸入を主体に減少していくことを示しており、他紙種よりも生産への影響と需給ギャップがこれから生じてくると思われる。
18年の再生パルプ輸入量は30万t、段ボール原紙の輸入量は318万tとなっている。21年以降古紙の輸入量が0となった場合、その時点での再生パルプの全世界製造キャパシティは300~500万t程度とみられ、1,000万t以上の段ボール原紙を輸入しなければ需給ギャップが生じる計算となる。
環境規制当初から中国政府は原紙を国内で製造せず輸入するよう促進する意向を見せていたが、その意向が現実のものとりつつあり中国向けの段原紙輸出需要を東南アジア各製紙メーカーは期待している。