■ 海上運賃の高騰による古紙物流問題。解決策はあるのか
2020年12月20日
コンテナ不足により古紙が運べない事からアジアメーカーでは古紙の在庫水準がさがり、当社親会社の正隆紙業に於いても古紙不足から操短を余儀なくされるほどの状況に陥っている。その他東南アジアメーカーでも同様だ。
特にベトナム向けの海上運賃は異常な価格になっており、売価を幾ら上げてもカバーできない状況だ。海上運賃はベースレートとなるOF(Ocean Freight)にTHC(港湾荷役費用)やBAF(燃料チャージ)、CAF(為替チャージ)、CIC(コンテナインバランスチャージ)など諸費用が加算される。しかし古紙の場合は「All in」条件となっており、OFだけの支払いかつOFも破格の運賃となっていた。
サーチャージは何も言わなければ通常Collect(揚地払い)であるため、どちらが負担するかは買手との交渉が可能だ。しかしサーチャージがAll inの古紙レートはOFが値上がりする為全てShipperの負担となってしまう。現在の海上運賃は全て船会社の「いい値」になっており条件を呑まなければ運んですら貰えない。そもそも条件を呑んでもコンテナが余れば運ぶというような状況だ。
この問題を解決すべくあの手この手で船会社と交渉しているが、効果的な方法はなかなか見つからない。コンテナを使わないバラ積み船は荷役にロープが2ベールにつき2本必要な上にOne wayとなってしまうリスクがある。また外洋・外貨に対応した本船に限られ、日本側の荷役費用も非常に高く採算が合わなかった。
自動車部品などと同様に海上運賃と物量を確約し定期契約の様なものも検討したが、現在の様な状況になった後では船会社は交渉に応じない。
アジア航路の船は浅い港にも入港できる様小型で800~1000TEU規模のコンテナ船が通常である。一方北米航路は船足が2週間以上と長く、本船も1万TEUを超える超大型船が多い。
その超大型船の船腹を安定的に埋めるため、船会社はSC(サービスコントラクト)という名目で荷主と年間契約を行う。トヨタなど自動車メーカーはそういった船会社のサービスを利用し、物量を約束した上で複数の船会社に入札を募る。応札した船会社はコンテナとスペースを優先的に確約する仕組みだ。あくまでSC契約である背景には、船会社側はコンテナあるいは本船が何らかの理由で用意できない場合は、サービスを提供できないとして船積みを延期あるいはキャンセルする事ができる免責次項をつける為だ。アジア航路は先で述べた通り小~中型船が主流でそういったSCを結ぶ必要性が船会社にはない。運賃の安い古紙ならなおさらの事である。