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古紙輸出市況 海上運賃の高騰と古紙価格。物流の混乱はいつまで続くのか

  ■ 古紙輸出市況 海上運賃の高騰と古紙価格。物流の混乱はいつまで続くのか

2020年12月24日

海上運賃の上昇と古紙不足に起因する古紙ドル価格の上昇は、年末に差し掛かった現在も続いている。上昇幅に一服感はあるものの、まだ値下がりが始まった状況ではない様だ。 

現在の古紙価格はJOCC CIF TAIWAN $170-205(CY11.5-12.5) CIF VIETNAM $210-220(CY11.0-13.0) 、AOCCはCIF ASIA 220-230㌦付近で高止まりしている。 しかし日本から台湾向けの海上運賃は平均1,200~1,700㌦/コンテナ、ベトナム向けは2,000~3,000㌦と以前の10~20倍の価格となっておりKG単価5~10円のコストアップとなっている事から古紙問屋店頭の輸出価格は低迷したままだ。

 北米からの古紙輸出Bookingは一時に比べ取りやすくなっているが、一部の船会社が中国経由の古紙運送を敬遠する動きを見せている事からタイ、マレーシアやインドネシアでは未だAOCCの調達は上手くいっていない。 台湾、ベトナム、インドは中国を経由しない航路便も多数あることから、米国古紙の入荷が再開しているとの話も出ている。 しかし古紙不足から地元回収古紙は250㌦を超え、200㌦以上でも割安な輸入古紙に依然引き合いは強い。一方で欧州、北米の古紙はこれからの成約分は旧正月付近の到着分となる為、高い値段で買い続ける事に疑問符がつく。

今年上半期は新型肺炎の流行により古紙の発生量が減少し価格が上昇したが、原紙は都市封鎖により需要が低迷し価格が下落した。10月以降韓国新大洋の火事と古紙輸入禁止が目前に迫った中国の需要により、ようやく中芯価格を中心に平均で30~50/㌧上向いたが、11月末以降の海上運賃の上昇と古紙価格の高騰分は添加できていない。現在秋需は終わった上に年明け旧正月以降は不需要期となる。古紙の値上がり分(約50-70㌦)と原紙輸出の海上運賃値上がり分(20㌦~50㌦)を原紙に価格転嫁できなければ大赤字となってしまう。しかし目前の古紙在庫状況を考えると古紙は高値を付けてでも調達しなければならないジレンマを抱えている。

 運賃が下がれば古紙価格も急激に軟化する可能性

今後の古紙・原紙価格の変動は、21年のどこかのタイミングでコンテナバランスが回復し海上運賃が下落した時の事も想定しなければならない。コンテナが不足し本船スケジュールも乱れている現在、船会社は計画的な集荷が行えているわけではない。空コンテナが返却されるタイミングは本来予測でしかなく、絶対数が少ないと自転車操業を余儀なくされる。返却されたコンテナを優先順位の高い(海上運賃の高い)顧客に案内する。それでも本船のスペースを埋める事ができない場合のみ古紙に声がかかる。

12月に入り、すでに予約済みBookingがキャンセルされる一方で直前に「やっぱりコンテナありました」と案内がくるのはそのためだ。コンテナバランスが回復し、本船数も増えればまた船会社間の集荷競争が再開するだろう。

船会社によると本船入出港の2週間前付近で船腹が満船にならないケースが増えてくると、船主から突然海上運賃を下げてでも船腹を埋めてくれと船会社に要請が入る事があるのだそうだ。上がるのが急ならば下がるのも急だ。その時商社が海上運賃に押し上げられた高い古紙契約残を持っていたならば、値下がりした運賃分を仕入値に加算して古紙を集め契約履行に走る可能性も否定できない。

現在のJOCCはCIF 190-210㌦付近。通常の運賃であればCY \17-18円前後はでる計算となる。千ドル以上に値上がりした海上運賃によって円建て商社買い値は10円前後となっているが、海上運賃が急に値下がれば、輸出古紙価格はあっという間に国内建値を超えて値上がりするかもしれない。さらにその後満腹になった製紙メーカーが買いの手を緩めるというシナリオで価格が下落するとも予想できる。

また欧米にはコンテナが潤沢に溜まっている。デバンや荷役が間に合わない事や、船会社が古紙Bookingを渋った事によりアジア向けの海上運賃が値上がりした。日本からの輸出が難しい事情とは少し原因が異なり、運賃さえ合えば物理的には欧米から古紙を運ぶことは可能だという事も捨て置けない。事実米国からアジア向けの古紙輸出はコンテナが調達でき始めている。

 古紙発生そのものは少ない

古紙の国際物流に支障がでている中で、意外にも現在の日本国内の古紙需給状況にはタイト感がある。来年の中国輸入禁止により古紙が余剰する事への危機感はあったものの、新型肺炎による世界的回収減により、東南アジアからの引き合いは予想よりも強く昨年以上の輸出量となった。

国内向けの出荷も原紙輸出需要にけん引され増加した。日本の段ボール原紙輸出量は総生産量の10%以上にもなり9月、10月は単月で10万tを超えた。またコロナによる発生減と集団回収の取りやめなどにより回収量そのものが減少した事も要因となった。 

年明けはすぐにコンテナ事情が回復する見通しは無く今後原紙・古紙共に輸出量が減少するだろう。さらに各メーカーの年末年始休転もあり上半期の古紙需給は緩む可能性が高い。しかしコンテナバランスが回復し、海上運賃が下がれば円建て輸出価格も上昇する可能性があることから21年は価格が乱高下する一年になるかもしれない。

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